2025年6月17日(火)

Wedge REPORT

2025年6月10日

言ってることとやってることが違ってないか?

その3「為政第二10」

「視其所以 觀其所由 察其所安 人焉廋哉 人焉廋哉」(その人がすることをじっと観察し、そのやり方を時間をかけて追い、その結果を見れば、その人の中身を隠すことはできない)

 渋沢栄一は、これが最もビジネスに当てはまると言っています。そして、かなり重要だと言っています。徳川家康も実践に使ったといいます。「人焉廋哉」。大事なので2回繰り返しています。人の行動、目的を察すれば、その人物を正体隠すことができるか決してできない。

 だから、相手がどういう行動を現実にとっているか、言ってることとやってることが違ってないかで、この人のよりどころが何か? 家族なのか、金なのか、土地なのか、不動産、あるいは株の支配権なのか、「休んずるところ」、つまり「この人が心を許すような場所」が分かるということです。

 逆に言えば、人格を隠すことはできない。だから表面上笑顔で良いこと言っていても、実際の行動をどうしているか。これで、ほぼ分かるということですね。つまり、上司がえらそうなことを言っていても、部下や一緒に働いている仲間には、分かる。

2500年、人間、組織の本質は、あまり変わっていない

その4「為政第二 19」

哀公問曰「何爲則民服」(哀公が問うた。何を実現すれば、民が服従するのか?)
孔子對曰「舉直錯諸枉、則民服。舉枉錯諸直、則民不服」(孔子は対してこういう。正しい人を、曲がった人の上に置けば民は従う。逆をすれば従わない)

 これはほぼこの通りで、要するに正しい人物、真っすぐな人物を登用して、ひん曲がった人たちの上に置けば、組織は良くなっていくし、人もそこに集まってくる。でも、頑張っている人がたくさんいるのに、おかしな人がいれば、みんなのやる気にもつながらない。

 おかしくない会社とは、ほぼ全部これが当てはまります。多くの現場の人は真面目にしっかりやっているのに、例えば、「俺は本社だから偉いぞ」ってなるんですね。

 孔子が生きた時代は、2500年前です。人間、組織の本質は、あまり変わっていません。結局、組織も国も人間が集まってできている。国もそうですが、結局、人間はこういう本質的なところは変わっていない。

 ハーバード・エーサイモン(1916~2001年。カーネギーメロン大学で、コンピューター・サイエンスと心理学の教授を務める)という、経営学者で、初めてノーベル経済学賞(大組織の経営行動と意思決定に関する)を、受賞した人がいます。

 この人が面白いことを言っています。「自分の本が分子生物学の本だったら、今頃誰も読んでないだろう」。何度でもこう読み返して、自分の中でこう理解しておいた方が間違わないです。

 東洋哲学と西洋哲学が一番違うところ、西洋の人が、あまり分かっていないなと思うのは、東洋哲学は、論語はもちろん、孫子でも、荀子でも、韓非子でも、「知行法一」なんです。つまり、知っているってことはできるということです。逆に、できてないんだったら、知っていると言わないと。

 西洋はどちらかというと、「知っている」と「やっている」を区別しています。二元論的です。おそらく、西洋的な価値観は、キリスト教などに支えられている。だから、東洋人にとって、西洋哲学は本当の意味では理解しづらい。


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