2025年6月17日(火)

Wedge REPORT

2025年6月10日

自分こそが、その地位にふさわしいと、嘆かない

その5「里仁第四14」

「不患無位 患所以立 不患莫己知 求爲可知也」(地位に立てないことを心配するのではなく、地位に立つ資格があるのかどうか心配せよ。自分自身が認められないことを心配するよりも、認められるように努力すべきだ)

 論語は孔子が喋ったことを編纂しているので、これと似たようなのが何カ所も出てきます。こうした例えはあんまりよくないかもしれないですが、孔子の‶つぶやき〟を集めたものでもあるのです。

 子貢という孔子の弟子で「孔門十哲の一人」と言われる人がいました。「貨殖列伝」にも記されるほど、孔子の考えを経営に生かして、商売でも大成功しました。そのお金を使って実際の国の政治を動かしたという人でもあります。

 そのため、「孔子よりも優秀だったのではないか?」ということを何度も聞かれて、その時に子貢は、「人間の優秀者にはいろいろあります」とした上で、「私は、そこそこ賢く見えてるかもしれない。だが、孔子は高い塀の中の大豪邸みたいなもので、私はまだその塀が低い。低いから豪邸がよく見えるけど、孔子くらい塀が高いとそれが見えない。だから自分が相当大きくならないと、孔子の本当の素晴らしさは分からない」と答えています。

 さて、論語に話を戻すと、自分こそが、その地位にふさわしいと、嘆かない。そうではなく地位に立つ理由を憂うべきだ。自分のことを認めてくれる人がいないことを憂うのではなく、自分が認められるには、どうしたらいいか考える。

 論語は徹底的に「自責」思考なんで、メンタルの調子がいいときではないと苦しいかもしれません。結果は努力に比例します。だから、努力をし続けなさいよと、一貫して言ってます。

「社長は大変なんだ」って言ったって、そんなの分かってもらえない

その6「子路第十三06」

「其身正 不令而行 其身不正 雖令弗從」(上に立つ人が正しい行いをすれば、命令しなくても従う。不正であれば、誰も従わない)

 実際の経営で言えば、例えば「経費削減だ」とか「こんな赤字大切なんだ」とか言っておきながら、自分は運転手をつけている経営者がいます。

 私は会社の経費を使わないようにしているので、タクシーの移動で1日2万円かかったとしても自腹です。それでも、「社長は大変なんだ」って言ったって、そんなの分かってもらえない。

 何が言いたいかといえば、もし、どうしてもお金がないんだったら、公園や、牛丼の吉野家で接待をしたらいいんです。名経営者とされる稲盛和夫さんは、接待は必ず吉野家だったと聞いたが事があります。交通費がないなら、時間を計算して電車に乗るなり、自転車買うなりする。みんな見てるんですよね、結局。何か隠そうとしてることはよく見てますよね。

 ただ、孔子は、人間は完璧ではないから、できないことが分かっていたんですよね。だから、理想を目指して行こうということが言いたかったんだと思います。


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