2024年11月22日(金)

ベテラン経済記者の眼

2014年5月1日

 またこの日の産経新聞では交渉筋の話として「事務レベルで詰める話と政治判断が必要となる項目の仕分けが済んだことが大きい」とも紹介している。筆者が想像するに、こうした部分での前進はあったのかもしれない。折しも衆院鹿児島2区の補選を27日に控えた中、選挙が終わるまでTPPの影響が及ぶ農家、特に畜産県である鹿児島に配慮が必要という観点からは、関係者が意識的に情報の広がりを抑えたいという意識が働いたことも、少ない情報の中で評価の違いを生む原因になった可能性がある。

真相は5月以降明らかに?

 ただ、「実質合意」とした読売報道とはちがった見方も出始めている。4月下旬の大型連休に入ったあたりから、新聞による「検証」が出始めているが、今回のTPP交渉の評価に関しては、29日付の朝日新聞では、米政府高官の話として「オバマ大統領と安倍首相はブレークスルーを果たしたと感じていると思う」と紹介する一方、甘利氏の「全体としての間合いは確実に縮まっているが、大筋合意というわけではない」という発言も引用した。

 筆者なりに整理すると、これまでの交渉では日米が全体的な意見の応酬をしてきた中で、今回は、事務レベルで妥協できる部分と政治的に決断が必要な部分が整理され、最終的な交渉のターゲット(目標)が明確になったという段階を迎えたのではないか、という印象だ。細かい部分まで交渉のターゲットを絞り込み、最終盤でこれに近づいてゆくことを相互に確認したという意味では「実質合意」したといえなくもない。

 ただ、合意というからには、具体的な数字や解決策で両者が「握った」とみるのが普通だろう。交渉戦略上、実際はそこまで到達しているのに外部に明らかにしていない可能性も十分にあるが、そのあたりは正直なところわからない。5月以降、ベトナムでの首席交渉官会合やシンガポールでの閣僚級会合が残されており、そうした交渉の中で、今回評価の割れた報道の真相が明らかになってくるのかもしれない。

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