2023年2月6日(月)

うつ病蔓延時代への処方箋

2014年5月28日

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 働く人がメンタル不調に陥ったら、その社員を把握して医療機関へとつなげればいいという考え方が定着するのは危険だ。そこに組織的な対応が伴えばいいのだか、会社は何かあれば医療機関へ問題解決のボールを投げてしまえばいい。こんな安直な発想でいれば、職場うつを減らす効果は出てこないだろう。

 法律で定められた対策を実施していれば、これで安全配慮義務を果たしたと勘違いする企業は少なくないと思われる。ただ、うつ病の知識を持たず、会社として何もメンタルヘルスに取り組んでこなかった多くの経営者たちに、必要性を意識させる効果はある。むしろ、法律で強制するよりは、3月に最高裁が判決した「東芝うつ病事件」の方が、はるかにインパクトがあるように思える。

 これは過重労働からうつ病になり休職後、解雇されたのは不当だとして、東芝の元女性社員が東芝に解雇無効と損害賠償等を求めた事件。最高裁での争点は、労働者が自身のメンタルヘルスに関する情報を会社に申告しなかったことは、損害賠償額を決める上での労働者の落ち度になるかどうか、であった。解雇無効はすでに争点ではなかった。最高裁は「使用者は、必ずしも労働者からの申告がなくても、その健康に関わる労働環境等に十分な注意を払うべき安全配慮義務を負っている」とした。

 労働安全衛生法の改正で義務付けられるストレスチェックを実施しているから安全配慮義務をしているとはならない。「必要に応じてその業務を軽減するなど労働者の心身の健康への配慮に努める必要がある」と最高裁が示している。従業員にとって、働きやすい職場なのか、心身の状態に問題がないかどうかを、企業は常に考える義務がある。この観点からみれば、ストレスチェック法案は、企業が取り組むべきメンタルヘルス対策の一歩にも満たない“半歩”程度のことでしかない。

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