2024年12月26日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年6月4日

 第3に、東シナ海の尖閣を含む海域について、日台間で昨年、画期的な漁業協定がまとまったのは、漁業という側面に絞り漁民の利益に特別の配慮をした結果、領土・主権と切り離した形で妥協が成立したからです。注意すべきは、同協定成立後も、台湾は尖閣についての従来の領有権主張を一切変えていません。(ただし、馬政権が漁業交渉中に、尖閣について中国から対日「共闘」の申し入れがあったのに対し、中台間で連繋することはないとの立場を明確にしたことは特筆されます。)

 これらのことを考慮するならば、台湾が南シナ海の問題により深く関与することに反対すべき理由はありませんが、今日見られる中国とASEANの対立解消のために台湾が果たし得る役割は極めて限定されたものと言わざるを得ません。

 南シナ海の領有権解決の正攻法は、あくまでも国連海洋法条約に基づく法的解決に期待するほかないように思われます。目下、中国とASEAN関係国との間で「行動規範」策定の事務的協議は続いていますが、中国側は引延し戦術に出ているようであり、交渉は進展していません。米、日ともに機会あるごとに法とルールによる解決、航行の自由の原則、武力を背景とした現状変更への反対などを訴え続ける必要があります。

[特集]南シナ海をめぐる中国とベトナムの衝突

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