2024年12月14日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年9月3日

 米AEIのマッザ研究員が、7月26日AEIウェブサイト掲載の論説で、尖閣をめぐる日中の睨み合いは、中国軍のプレゼンスを高めることで台湾の安全に脅威を与えており、尖閣で中国の支配権が確立されるようなことがあれば重大であり、台湾はアジアの安定の鍵となる現状維持を支持すべきであり、尖閣への領有権主張では北京と一線を画し、東シナ海平和イニシアチブを進めるべきである、と述べています。

 すなわち、尖閣をめぐる睨み合いは、台湾の安全保障に脅威を与えている。台湾、中国、日本の全てが島の領有権を主張しているが、中国と日本は、時として、台湾の主権主張を無視して紛争の解決を図ろうとしているように見える。その結果、台湾は東アジアにおいて一層軽視され、台湾の主権が侵害されたままとなる可能性がある。さらに差し迫った問題は、台湾自身の将来の安全である。

 現在、東シナ海での睨み合いのため、中国の準軍事組織と軍艦は、基隆から約170キロの尖閣周辺で、活動の頻度を高めており、人民解放軍は、台湾の東海上、台湾の最重要港湾都市の一つの近くで行動するという経験を得ている。

 これらの艦艇は、潜在敵国の軍隊に接近し、外国の船を追跡したり避けたりする経験も得ている。今年初めの人民解放軍の海軍による自衛隊への火器管制レーダー照射は、実戦での戦闘システムと日本の反応をテストすることとなった。

 これら全ては、台湾にとって憂慮すべきことである。中国海軍が現在集積している経験と知識は、台湾を政治的解決に向かうよう脅したり強制したりするために使われるかもしれない。

 しかし、台湾には、中国海軍が現在得ている有用な教訓以上に憂慮すべきことがある。万が一、中国が尖閣への支配権確立に成功するようなことがあれば、台湾にとって有害な結果がもたらされることになろう。

 第一に、中国による尖閣の支配、あるいは、現在続いている睨み合いでさえも、中国海軍の台湾近海におけるプレゼンスを高める。中国の艦艇の主たる目的が対日防御であるとしても、中国の艦艇は、海峡有事に際して、台湾の行動に対応したり日本の干渉の機先を制したりするのに良い場所に位置している。このような中国海軍のプレゼンスは、台湾の北方の横腹を不安定にし、台湾軍に防衛範囲を拡大させ、結果的に兵力の集中を弱めさせることになるかもしれない。

 第二に、尖閣における中国の成功、あるいは、尖閣周囲で「旧状復帰」に失敗することでさえも、アジアにおける状況を破壊的に変更するであろう。このような結果は、目的達成のために脅迫と武力を用いようとする中国の決意を有効にする。中国が日本との紛争で成功することができれば、アジアのより非力な国の関わる係争地域において間違いなく同じことをするであろう。


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