2024年12月27日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2013年9月3日

 台湾は、どのように進むべきか。第一に、台湾は、領有権について、自らの主張と中国の主張の間に、一線を画すべきである。それに失敗すれば、台湾は、日米から疎外され、中国本土との論争において自らを不安定な地位に置くことになる。中国と台湾はともに尖閣を台湾の一部と看做しているが、尖閣を防衛する権利が中国にあるならば、中国は、金門・馬祖、ひいては台湾そのものを「防衛する」権利を持つということになりはしないか。台湾が最近日本との間で結んだ漁業協定は、極めて前向きな一歩であった。第二に、台湾は、海上における現在の睨み合いが台湾防衛を複雑化させており、長期にわたって両岸関係の安定にとって有害である、とワシントンに伝えるべきである。

 台湾は、当面はアジアにおける安定は旧状に戻ることによって最もよく達成される、ということを認識すべきである。その一方、台湾は、馬英九総統の東シナ海平和イニシアチブを推進すべきである。同イニシアチブは、緊張緩和のための実質的なステップを含むのみならず、中国と比較して、台湾の行動の正しさを浮き彫りにして、地域における台湾の地位を高めてくれる。

 台湾には、もちろん台湾の主権を防衛する権利と義務があるが、長い目で見れば、台湾は、東シナ海における旧状復帰の促進によってこそ、その権利と義務を最もよく遂行できるであろう、と述べています。

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 台湾が中国の尻馬に乗って、尖閣問題で日本と対立するのは危険なゲームだと台湾に警告を発するとともに、米国に対しても中国の東シナ海進出は台湾の防衛にとって有害だと警告している論説です。

 尖閣周辺における中国軍事的影響力の増大とその継続は、確かに台湾の安全保障にとっては、脅威の増大となります。それを避けるためには、尖閣に対する台湾の立場と中国の立場との間に一線を画するべきだというのもその通りですが、国際法的にはなかなか難しいのでしょう。その意味で、論説も特記しているように、日台漁業協定の成立は、たしかに歓迎すべき成果です。

 この論説の趣旨は、法的側面でなく、尖閣地域における中国の軍事的プレゼンス、ひいては軍事的影響力の増大は、やがては台湾の安全保障にも関する軍事バランスの問題だと指摘して、米国は中立的な態度をとらず、より積極的に中国の進出を警戒すべきだと言うことにあると思われます。論説が「旧状復帰」と言っているのも、法的意味というよりも、軍事バランスについてでしょう。すなわち、米国は、尖閣周辺の東シナ海における中国の軍事的影響力の増大を放置しておいてよいのか、それはやがては台湾の安全保障にも影響してくる問題だ、という指摘であり、もとより賛成できる内容です。

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