2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年6月27日

 ベトナムは、紛争の平和的解決へのコミットメントを繰り返し言っている。中国がそれに応えないならば、米国は、海軍のプレゼンス増大を通じて、ベトナムを支持する用意をすべきである。これは、ワシントンに、中国の能力を見極め、事態の鎮静化に役立とう。CNOOCの米国における活動規制といった、他のオプションも考慮し得る。米国の言葉が行動を伴わなければ、地域の安定と平和を支持するという米国の約束への信頼は損なわれるであろう、と論じています。

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 エコノミーは米外交評議会の中国専門家、レヴィは同じくエネルギー問題の専門家です。レトリックだけでは不十分であり、目に見える行動をとるべきであるとの趣旨は適切であると思います。アメリカが今のままでは駄目だという、焦りを感じさせる論説と言っても良いでしょう。

 ただ、論説が提案している、東南アジアと統一戦線を達成、維持し、米海軍力の増強により強い姿勢を示すことで、中国に対する圧力とする、というのは、いずれも正攻法ですが、言うべくして簡単に実現できていないのが現状です。確かに、ASEANの問題意識と結束は、高まってはいます。しかし、米国はそれを積極的に後押しするチャンスを失している感があります。

 海軍力の増強と配備は、もとより必要ですが、米国内の予算上の制約は、外部からは如何ともし難いものがあります。それに加えて、過去30年間の中国の防衛力の急激な増加の蓄積により、南シナ海の軍事バランスも予断を許さないものがあるようです。

 近年の中国の第四世代機の急増により、米空母機動部隊だけで南シナ海の制空権を維持できるかどうか、疑問符が付き始めています。特に、潜水艦戦力となると、日本の対潜哨戒機能なしに、東シナ海、南シナ海の米艦船の安全が確保されることが困難であるような軍事バランスとなっていると思われます。集団的自衛権の行使による、シーレーン防衛が、理論の問題でなく、必要不可欠となって来ています。

[特集]南シナ海をめぐる中国とベトナムの衝突

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