2025年12月11日(木)

BBC News

2025年11月14日

ドイツは2035年までに兵士の数を26万人に増強することを計画している

ドイツの連立政権は13日、兵力増強に向けた新たな兵役制度を導入する方針でまとまったと発表した。年内に可決され、来年施行される見通し。

新制度では、来年から18歳の男性全員が兵役を希望するかを問う質問票に回答し、2027年からは身体検査を受けることが義務付けられる。兵役をめぐる議論は数カ月にわたり続いていた。

今回の決定は、ドイツ政府が欧州最強の通常戦力軍隊の創設を目指す中で下された。

メルツ首相率いる中道右派「キリスト教民主・社会同盟(CDU・CSU)」と中道左派の社会民主党(SPD)は連立を組んだ際、「まずは」志願兵制度を再導入することで合意していた。

ドイツ最大の防衛企業ラインメタルのアルミン・パッペルガー最高経営責任者(CEO)は、この目標は5年以内に達成可能だと、BBCに語った。

パッペルガー氏は、ドイツ連邦軍を増強するというフリードリヒ・メルツ首相の目標は「現実的」なもので、政府から「明確な決定」が下されるだろうと、BBCに語った。

また、未来を見通す「ガラス玉はない」としつつ、ドイツは「2029年に向けて備える」必要があるという点では同意した。

連邦軍総監のカーステン・ブロイヤー将軍は以前、北大西洋条約機構(NATO)の西側の同盟国は、4年以内に起こり得るロシアの攻撃に備える必要があると警告していた

新たな兵役制度

ドイツ連邦軍には現在、約18万2000人の兵士がいる。新制度では、来年中に2万人増員し、今後10年間で25万5000人~26万人に増やすことを目指す。また、約20万人の予備役が追加される。

来年からは18歳のすべての男女に兵役への関心や意思を問う質問票が送付される。回答は、男性は義務、女性は任意となる。

2027年7月からは、18歳の男性全員が兵役適性を判断するための身体検査を受ける必要がある。

この政府の目標が達成されない場合、議会で強制的な徴兵が検討される可能性がある。戦争が勃発した場合、軍は潜在的な徴兵対象者について、質問票や身体検査の結果を活用できる。

ドイツ政界の左派の一部は、兵役の義務化に強く反対している。

多くの若者は慎重で、大多数が反対している。ドイツ誌シュテルンが委託した世論調査会社フォルサの調査では、回答者の過半数は徴兵義務に賛成した一方、18~29歳の63%は反対だと答えた。

ベルリン在住の学生ジミさん(17)は、今週初めに連邦議会前で行われた反徴兵デモに参加した。「戦争に行きたくない。死にたくないし、撃たれたくないから」と、ジミさんは話した。「人を撃ちたくもない」。

ドイツが攻撃されるというのは「ありえない抽象的なシナリオ」で、政府がそれを利用して「何百万もの若者の自己決定権を奪っている」と、ジミさんは述べた。

一方、21歳のジェイソンさんは今年、「安全保障の状況」を理由に、連邦軍への入隊を志願した。

「最悪の事態に備えて、平和と民主主義を守るために貢献したかった」と、ジェイソンさんは説明。入隊することで「社会に恩返しをしている」と感じられると話した。さらに、軍の抑止力によって、「潜在的な敵が攻撃を考えることさえしない」だろうと信じていると述べた。

ボリス・ピストリウス国防相は、新たな兵役制度が導入されても「懸念する理由も(中略)恐れる必要もない」と述べ、国民を安心させようとしている。

「我々の軍が装備、訓練、人員によって抑止力と防衛力を高めれば高めるほど、我々が紛争当事者になる可能性は低くなる」と、ピストリウス氏は述べた。

ドイツでは冷戦終結後に防衛支出が大幅に縮小され、兵役制度は2011年に停止された。

同国はその過去の経験から、軍事力の誇示を長らく控えてきた。しかし今年に入り、メルツ氏はロシアのウクライナ全面侵攻を念頭に、ドイツの防衛に関するルールについては「いまや、必要なことは何でも行う、という考えでなければならない」と発言した。

NATOの欧州の加盟国は、アメリカのドナルド・トランプ政権から、防衛費の増額を迫られている。

欧州における再軍備の動きは、独防衛企業ラインメタルに大きな収益をもたらしている。

ウクライナにも軍備を供給する同社のパッペルガーCEOは、「膨大な需要があるので、我々は多額の利益を上げている」と述べた。

「車両そして弾薬の面で強固な体制を構築し、独自の衛星技術能力も確立しなければならない。電子機器や人工知能分野でもこれまで以上に取り組んでいる」

アメリカでは昨年、パッペルガー氏がロシアの暗殺計画の標的となっていると報じられた。当時、これが事実かは確認されておらず、パッペルガー氏は「自分は元気だし、安全だと感じている」と話していた。

欧州が冷戦状態あるいはハイブリッド戦争状態に陥っていると感じるかと問われると、パッペンガ―氏は「呼び名はどうであれ、平和な時代ではない」と答えた。

(英語記事 Germany agrees new military service plan to boost troop numbers

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c4gw3g60gg7o


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