2025年12月12日(金)

BBC News

2025年11月15日

中国外務省は14日夜、中国国民に対して日本への渡航を控えるよう注意喚起した。中国政府は13日には、孫衛東外務次官が日本の金杉憲治・駐中国大使を呼び出して「厳正な申し入れと強烈な抗議」を行い、日本の外務省も呉江浩・駐日中国大使を呼び出し、中国の大阪総領事によるソーシャルメディア発言に抗議していた。台湾有事をめぐる高市早苗首相による7日の国会答弁を機に、日本と中国の外交関係が悪化している。

中国外務省は14日の声明で、両国関係の悪化と、「日本の指導者による台湾に対する露骨な挑発発言」を理由に、中国と日本の人的交流の雰囲気が著しく悪化したため、中国人の身体と生命の安全に「重大なリスク」が生じたと述べた。在日中国人の安全も脅かされているとしている。

日本の高市首相は7日の国会答弁で、台湾有事が日本の集団的自衛権の行使を可能にする「存立危機事態」になり得ると述べた。この答弁が波紋を広げている。

高市氏の発言に、中国政府は激しく反発。13日には孫衛東外務次官が金杉憲治・駐中国大使を呼び出して「厳正な申し入れと強烈な抗議」を行い、答弁撤回を求めた。

一方、日本政府も14日午後、船越健裕外務事務次官が呉江浩駐日中国大使を召致し、薛剣在・大阪中国総領事がソーシャルメディア「X」で「極めて不適切な発信を行ったことに対し強く抗議」したと明らかにした。

外務省によると、船越次官は呉大使に、改めて中国側が適切な対応をとるよう強く要求。次官と大使がそれぞれに自国の立場から見解を主張したという。

これまでの経緯

一連の事態のきっかけとなったのは日本の衆院予算委員会で7日、高市首相が行った答弁だ。

野党議員が首相に、台湾をめぐってどのような状況が、日本にとって「存立危機事態」にあたるのかと質問したところ、首相は「戦艦を使って、武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態になりうるケースだ」と答えた。

「存立危機事態」とは、2015年成立の安全保障関連法に出てくる法的用語で、同盟国に対する武力攻撃が日本の存立を脅かす事態を指す。そうした状況では、脅威に対応するため、自衛隊が出動できる。

この高市氏の発言に、中国政府は激しく反発。中国外務省は「まったくひどい」と評した。

中国の薛剣・駐大阪総領事は8日にソーシャルメディア「X」で、高市氏の国会発言に関する報道記事を引用。「勝手に突っ込んできたその汚い首は一瞬のちゅうちょもなく斬ってやるしかない」とコメントを書き加えた。

日本の木原稔官房長官は10日の記者会見で、薛氏の発言の趣旨は「明確ではない」ものの、「極めて不適切」だと述べた。

日本政府は薛氏の発言について中国側に抗議。中国政府も高市氏の発言について日本に抗議している。

薛氏の投稿はその後、削除された。だが、とげのあるやりとりは尾を引いている。

高市氏は10日、発言の撤回を否定。「政府の従来の見解に沿ったもの」と主張した。ただ同時に、特定のシナリオについてコメントすることは今後は慎むとした。

長年にわたる日中の対立は、1800年代の一連の武力衝突や、第2次世界大戦における日本による中国での残忍な軍事行動にさかのぼる。

こうした歴史問題が、両国関係を阻害し続けている。故安倍晋三元首相から期待を寄せられていた高市氏が首相となったことで、緊張悪化も予想される。

保守派の高市氏は、アメリカとの関係強化を目指しており、日本の防衛費を増やす考えを明らかにしている。中国政府はこれを警戒している。

(英語記事 China summons Japan ambassador as war of words over Taiwan drags on

提供元:https://www.bbc.com/japanese/articles/c7810zxwp80o


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