米印の官僚に政治的方向性が欠けていたことも、関係を漂流させた。米政府は、貿易に関する不満や、IT専門家へのビザの制限から、インドに高い優先順位を置いてこなかった。オバマとシンは、ともに、他の優先事項を持っていた。
米印関係の将来について懸念すべき十分な理由があるが、モディが首相になったことは、その理由の中に入らない。おそらく、モディの首相就任は、ワシントンが望み得た最高のニュースであろう。モディは、「両国の関係は、個人に関する事件によって決定されることはあり得ず、影響されることすらあり得ない」と公言している。その政策ビジョンと決定的な信認により、モディは、米国にとって最良のパートナー候補となっている。
モディが、「世界が我々に惹きつけられるよう、国内を整える」と強調していることは、米政府にとって喜ばしい変化として歓迎されるべきである。「現在のインド政府の機能不全が、必要性の高い、インドの国防インフラの近代化と強化を妨げている」というモディの見解も同様である。
モディの優先事項は、確かに、国内にあるであろうが、助けになる外的環境は、彼の野心的な国内政策を達成するのに、極めて重要である。インドが経済的に成長すれば、自ずから、外交政策にダイナミズムを与えることになる。モディは、国内的に脆弱なパキスタン、アフガンの政治的不確実さ、自己主張を強める中国といった、インドが直面している課題が、有用な米印関係無しでは取り組むことが出来ないことに、すぐに気付くであろう。米国との強い絆は、経済的に発展し軍事的に強固なインドという、モディのビジョンを維持する助けとなろう。
米国はモディに手を差し伸べる必要があり、過去を消すことは出来ないが、建設的に管理されるならば、米印関係の将来は輝かしいものであり得る、ということを納得させる必要がある。モディは、米印関係を好転させるのに最適の位置にいる人物である、と論じています。
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パントは、インドの外交防衛政策、南アジア情勢、アジア太平洋の安全保障問題を専門としており、キングス・カレッジ・ロンドンでは、防衛研究の教授を務めています。筆者の経歴から言って、論説は、モディ政権下の米印関係について、最も信頼できる専門的判断の一つであろうと思います。