世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年7月4日

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 二つ目はアメリカ人が特に陥りやすいが、国家より個人に焦点を合わせ、政策より法に依拠することである。中国の問題は政策の問題、人民解放軍の問題であり、5名の軍人の問題ではない。ロシアについてもロシアの政策の問題で、プーチンの取り巻きの問題ではない。こういう時に法は最善の手段ではない。問題は破廉恥な重商国家、我々の法規範を受け入れない国にどう対処するかである。米国の管轄権が普遍的で正統である振りをするより、窃取した情報で利益を挙げている企業に痛みを与える行動が意味を持つ、と論じています。

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 中国のサイバースパイ問題は起訴された軍人個人の問題ではなく、中国国家の問題であるから、個人の起訴は効果がない、実質措置が取りにくいので、何かしていると格好をつけているだけではないか、と指摘している論説です。これは、その通りであろうと思います。

 ウクライナに関連したプーチンの取り巻きへのビザ発給停止、資産凍結措置も、個人を対象とした措置で、同じ問題があります。個人を制裁対象にすることが有効な場合もあるでしょうが、制裁で達成したい目的、制裁の効果、制裁に伴うコストなど諸要素を考慮に入れて、制裁の内容を決めるべきです。中国のサイバースパイ、ロシアのウクライナ政策への制裁は、ともに的を射ていない面があります。この論説が指摘しているのは、その点です。

 ただ、個人に対する措置だから法的措置になるとして、法的アプローチより政策的アプローチをとるべきである、という指摘は、制裁対象の範囲と制裁実施のやり方という無関係なことを関連づけており、論理が混線しているきらいがあります。中国企業を米国から締め出すにも法律が必要です。国家を対象にしたイラン制裁法というのもあります。制裁には法的措置は原則必要で、法的対応か政策対応かの選択問題ではありません。

 日本における中国のサイバースパイの激しさは、米国の場合とほぼ同様でしょう。しかし、日本にはスパイ防止法もありません。国家安全保障上の機密保護、産業機密保護には、今後真剣に取り組む必要があります。機密漏洩罪を対象とする特定機密保護法についても、「知る権利を害する」などといった謬論が横行する状況にあって、「機密探知罪」の導入は道遠しですが、必要な取り組みをしなければなりません。

[特集] サイバー戦争

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