2024年12月22日(日)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2014年7月9日

 これについて浦氏の弁護人を務める張思之弁護士(86)は筆者にこう語った。「(拘束の)カギになったのは六四(天安門事件)に対する浦氏の態度だが、公安は(早くから)浦氏を拘束する機会を探していた」。張氏は、1980〜81年の「四人組」裁判で毛沢東夫人・江青らの弁護団長も務めた法曹界の重鎮。今や改革派知識人の支柱となっている大物弁護士である。

 結局、天安門事件の研究会は浦氏を捕まえるための突破口となったが、公安局の事情聴取を受けた関係者は捜査員から「浦はここ2、3年で大きな声を上げており、この辺りで捕まえなければならない時期に来ている」と告げられた。

「控えめ」か「抗争」か
共産党・公安当局との闘い方

 張氏は、6月9日に浦氏と接見した直後に公表した声明でこう述べている。「現在の状況は非常に不利だ。懲役2〜3年の判決が出るとの見方も幻想だ」。張氏は取材にも「起訴時に罪名が追加される可能性が高い」と見ている。

 しかしそもそも逮捕容疑となった2つも詳細が不明で「でっち上げ」(複数の人権派弁護士)との見方が強い。さらに逮捕を発表してからさらに罪名を探すと公表する手荒な捜査手法は、浦氏に対する「報復」の色彩が強く、もはや「政治事件」となっている現実がある。

 習近平指導部が、言論抑圧を強め、「異論」を唱える弁護士や学者、活動家らへ容赦ない引き締めに乗り出す中、中国の人権派弁護士らの間では、どう共産党当局と対峙すべきかについて激しい議論が展開されている。浦氏という社会的影響力の大きな著名弁護士の逮捕とその後の展開は、今後の中国社会制度改革の行方を占う試金石になる問題だからだ。

 口火を切ったのは上海の斯偉江弁護士(44)。張思之氏が浦氏に接見する前日の6月8日にこう発信した。

 「浦氏夫人の委託を受け、あす(9日)午後、北京市第一看守所(留置所)に行き、浦氏と接見するつもりだ」

 しかし著名民間学者・郭玉閃氏(37)は9日、斯氏の言動に対して「張思之先生は高齢でありながら主任弁護を務めている。(それなのに)老先生の実質的な同意もなく、一部のカギとなる友人の強い支持を得て、『高調』(派手に)に北京に来た」と批判する声明を出した。


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