2024年4月27日(土)

研究と本とわたし

2014年7月17日

――ご両親は、色々なジャンルの本を揃えて、気がついたときにはいつでも好きな本が読めるような環境をつくって下さったわけですね。

佐々木氏:両親がどこまで意識していたかはわかりませんが、とにかく周りに本を置いておこうということだったと思います。子供が興味を持つ方向に自然に誘導していくという両親の教育方針は、私にとって大変ありがたいことでした。おかげで知らないうちに世界が広がっていきました。

 最近はそういうことを実現しにくい時代になっていますが、本当は、不必要なものがいっぱい周りにあるという環境は、人、とりわけ子どもにとっては望ましいことだと思うのです。

 だから私も自分の子どもにはそういう教育をしました。いろんなものを置いておいて、手を伸ばしたら、それに繋がるようなものを追加して置いておく。例えば二番目の子どもは、小さいときから数が書いてある本が好きで、すぐに手を伸ばしていました。この子は数字が好きなんだと思って、それから数学の本をどんどん与えていったら、今は数学の研究をしています。

 そうした、子どもの可能性を育む環境を用意してくれた両親に大変感謝しています。

――当初は理科系に進まれて化学者を目指されたそうですが、子ども時代からそういう方面の興味もお持ちだったのですか?

佐々木氏: それは『科学図鑑』との出会いがきっかけです。小学校低学年のときの担任の先生は、毎日私たちに詩を書かせたのですが、母が私が書いた詩を全国規模の詩のコンクールに出してくれましてね。5年生のときにはそのコンクールで最優秀賞をいただきました。その賞品の一つが、20巻以上ある全巻カラーの百科事典『科学図鑑』だったのです。

 この本は湯川秀樹さんの監修で、物理、化学、生物はもちろん、最先端の科学技術や匠の技まで載っている。その中で私が最も魅かれたのが化学で、実験がしたくてしょうがない。それで両親に頼んで実験器具を買ってもらい、ガラス瓶入りの薬品と一緒に並べたときは嬉しかったですね。もう、化学者になった気分でした(笑)。

 その後中学・高校と進んで、はっきり化学者を志すようになり、それ以外の道はまったく考えませんでした。実家は寺なので、父親はお坊さんに、なんて言っていましたが、気にも留めていませんでした。


新着記事

»もっと見る