アズラム先生は「素晴らしいアイデアだからぜひ、やりましょう」と即答してくれた。その日のうちに最高経営責任者(CEO)のトム・ミハルヴィッチ先生と最高執行責任者(COO)のビル・ピーコック氏にも話してくれ、「トムもビルもぜひ、やろう、とのことよ」と返事をもらった。それがキヤノンヘルスケアUSAの始まりである。
前例がないからと言わず、失敗を恐れず決断し、挑戦できるリーダーたちのオープンマインドな姿勢と柔軟性がいつの時代もイノベーションを生み、新しい扉を開いていく。
様々な課題ももちろん出てくるが、それらは〝Fail Fast〟のスピリットを持ちながら、その都度考えて修正し、解決してゆけばよいだけの話だ。一番大切なのは、相互に信頼関係があることと、まず一歩踏み出す勇気を持つことだ。
現在、CCのメインキャンパスに建設されているキヤノンヘルスケアUSAの本社は、27年春にグランドオープニングする予定だ。
1階はキヤノンのCTやMRIなどの医療機器が設置された外来患者画像診断センターになる。そこは患者を診る病院施設であるため、CCが運営を行う。2階では、キヤノンの研究者やエンジニア、CCの臨床研究者が共同開発を行う。医療・臨床のイノベーションを医療現場から直接スピード感を持って効率的に生み出していく狙いがある。この形態は前例がなく、業界初の試みだが、決断すべきリーダーたちが「まずやってみよう」という心構えを持っていたからこそ実現できたことだ。
やらないことが最大のリスク
あえて石橋を叩かずに渡れ!
何かに取り組む際、石橋を叩いて渡るような慎重さや丁寧さは、日本人が培ってきた強みの一つだ。
しかし「石橋を叩いて、叩いて、渡らない」ケースがいかに多いか。現状を見直すことで、日本にイノベーションをもっと起こしていくヒントを見つけることができると思う。
私は、社内で「石橋を叩かないで渡れ」と言うこともある。「問題が起こったらみんなで力を合わせて対処する、必ずうまくいくから」と楽観的に思い込める企業文化も大切だ。何も決断せず、やらないことが最大のリスクにもなる。
ジェフ・ベゾスはウオール・ストリートでの安定した職を捨て、アマゾンを創業した時に用いた「Regret Minimization Framework(後悔を最小化するための考え方)」について、次のように述べている。
「80歳になった自分が人生を振り返った時を想像し、挑戦しなかった後悔を減らすことを念頭に置いて物事を決めていく。やらずに後悔するより、やって失敗する道を選ぶ」
人生とは、起きたことの積み重ねではなく、その都度、起きたことにどう対応したかの積み重ねである。失敗を恐れることなく、まずは前に一歩を踏み出そうではないか。
