2022年9月26日(月)

地域再生のキーワード

2014年10月16日

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磯山友幸 (いそやま・ともゆき)

ジャーナリスト

千葉商科大学教授(4月から)。1987年日本経済新聞社に入社。フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長などを務め、11年に独立。著書に『2022年、働き方はこうなる』(PHPビジネス新書)など。

 「町の発展に貢献して欲しい」。淡路小学校校区の5町会や千代田区から、安田不動産はそんな期待を寄せられていた。容積率を515%から990%に拡張することと引き換えに、コミュニティ施設の建設や運営が求められた。若い学生を住民にするための学生マンションもその一つだった。

ライブラリースペースでインタビューに応える、安田不動産の松本久美さんと、須川和也さん (写真・井上智幸)

 当時、住民との交渉に当たっていた安田不動産の須川和也さん( 53 、現・取締役開発第一部長)は、再開発を機に町を再興させたいという地元のニーズをヒシヒシと感じていた。何世代にもわたって人々が暮らしてきた都市中心部の再開発で最大の難点は細分化された権利関係の調整である。200人以上の権利者全員から再開発の合意を得たのは、須川氏らの手腕もさることながら、再開発への期待の大きさを物語っていた。

 江戸の人情味を引き継ぐ神田の町には、今でも昔ながらの町会や地域活動が生きている。ところが住環境の変化で若い世代がどんどん流出し、住民の数が激減していた。それを如実に示しているのが神田祭。それぞれの町会は競って立派な神輿を作り、それを維持してきたが、今や住民だけでは担ぎ上げることはできない。このままでは町が滅びてしまうという危機感が住民の間にしみわたっていたのだ。

地域情報誌
「FREE AWAJI BOOK」
(写真:グッドモーニングス社)

 そんな期待を感じていた須川氏の目に留まったのが、熱心に地元の声を聞いていた松本さんだった。松本さん自身、博士となっても将来の進路を描けずにいた。須川氏が松本さんを上司に売り込むと、いくつかの偶然も重なって、安田への就職が決まった。11年4月のことだ。新しいコミュニティづくりを目指して安田不動産は、地元住民と一緒になって地域おこしのための一般社団法人「淡路エリアマネジメント(AAM)」を設立する。松本さんは須川氏の下、事務局サブマネージャーとして、地域活性化の触媒役を担うことになった。

 地域の人たちとの交流を通じて松本さんが考えたのが、どうやって「住み続けられる町づくり」を実現するかだった。そんな思いが「人情、情緒を引き継ぎ、大きなコミュニティをはぐくむ」というAAMの基本理念となった。ワテラス内にできるコミュニティ施設「ワテラスコモン」と、学生マンション「ワテラススチューデントハウス」の運営、町会やNPOなどとの地域連携が松本さんの仕事になった。

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