2022年8月19日(金)

地域再生のキーワード

2014年8月25日

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磯山友幸 (いそやま・ともゆき)

ジャーナリスト

千葉商科大学教授(4月から)。1987年日本経済新聞社に入社。フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長などを務め、11年に独立。著書に『2022年、働き方はこうなる』(PHPビジネス新書)など。

3月末に国家戦略特区に指定された兵庫県養父(やぶ)市。県外出身の民間人副市長が地元の宝を世界に売り出す。地元の人が気付かない良さは「よそ者」だからこそ見抜ける。

養父市副市長の三野昌二さん(中央)。元京都伏見の杜氏だった西谷弘之さん(右)。山椒を摘む西谷賢一さん(左)

 「やってもらいたい棚田があるんだが、一度見に来てもらえないか」。

 兵庫県養父(やぶ)市の副市長を務める三野昌二さん(58)の携帯に、農業委員を務める地元の農家から電話が入った。昨年2月に広瀬栄市長に口説かれて副市長を引き受けたころは、「よそ者が何をやるのか」と見られてきたが、三野さんの改革に少しずつ理解を示す人の輪が広がっている。

 三野さんは大手旅行会社を振り出しに、リゾートホテルやゴルフ場の立ち上げやレストランの経営管理などを手掛け、長崎のテーマパーク「ハウステンボス」の再生にも関与した。

 そんな経歴を改革派市長に買われ、養父市が100%出資する地域おこし会社「やぶパートナーズ」の代表取締役も兼ねる。

兵庫県養父市
人口:25,735
世帯数:9,683
主な産業:磁石製造など製造業をトップに、観光、農業、畜産業がそれに続く。

 養父市へは京都から特急で2時間、もう少しで日本海側に抜ける中山間地に広がる。人口は約2万6000人だが、ご多分に漏れず高齢化と人口減少が止まらない。市域の84%が山林で、谷筋に沿って山の奥まで小規模な棚田が広がるが、そんな中山間地でのコメ作りは大型機械も入らず重労働のため、年を追うごとに休耕田や耕作放棄地が増えている。日本の農業が直面する「限界」が見える典型的な中山間地農業地帯だ。

 「歳とって耕作できない人が毎年増えている。この美しい風景もあと数年かもしれません」

 市の中心部から30分ほど山を登った別宮(べっくう)地区にある、田植えが終わった棚田を前に西谷弘之さん(71)はつぶやいた。

 スキー場で民宿を営むかたわら、京都伏見の杜氏だった経験を生かして「どぶろく村特区」の認定を受け、酒造りに取り組む。棚田では酒米作りをしている。そんな西谷さんも、棚田はそろそろ終わりかと焦り始めていた。

 そこにやってきたのが三野さんだった。何とか棚田を維持できないか。三野さんは様々なアイデアを実行に移していった。

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