2022年8月10日(水)

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2014年5月20日

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磯山友幸 (いそやま・ともゆき)

ジャーナリスト

千葉商科大学教授(4月から)。1987年日本経済新聞社に入社。フランクフルト支局長、「日経ビジネス」副編集長などを務め、11年に独立。著書に『2022年、働き方はこうなる』(PHPビジネス新書)など。

 五十にして天命を知る─。「論語」に記された孔子の言葉はあまりにも有名だ。孔子以降の長い間、人々は天命を知った後は「余生」として老後を送るのが常だったに違いない。だが、私たちは平均余命が大きく延びた日本社会を生きている。天命を知ったればこそ、もう1回人生を楽しむことができるようになったのだ。「会社がすべて」の人生を送った人にこそおススメの「50代のリセット」を提案したい。

食べていけるくらいの利益が出ればいい

 東京・押上駅から10分ほど歩いたところにある十軒橋商店街(墨田区)。ご多分に漏れずシャッター商店街だが、その一角に日本酒好きの間で急速に有名になったお店がある。日本酒バー「酔香」。店主の菅原雅信さんが2010年5月、50歳の時に開いたお店だ。この菅原さん、出版大手の日経BP社で『日経レストラン』の編集長などを務めた有能な記者だった。実は、筆者の『日経ビジネス』時代の先輩でもある。

カウンターに立つ日本酒バー・酔香の菅原雅信さん(撮影・井上智幸)

 菅原さんが起業を思い立ったのは50歳になった時。現場取材が中心の記者から内勤が中心のデスクへと仕事が変わったことが大きかった。

 「不本意な形で会社に居残るくらいなら、気力体力があるうちに新しい事をしたい」。そんな思いがわいた。ちょうど会社が希望退職者を募集したのが背中を押した。

 『日経レストラン』時代に外食業界のノウハウを学んだ。もともと日本酒が好きで、取材を通じて多くの蔵元と知り合いになった。そんな知識や人脈が店を開くのに役立ったのは言うまでもない。「古い民家をリノベーションした日本酒の店」。まずコンセプトを明確にして絞り込んだのは、記者として見てきた外食業の基本だった。物件探しに奔走したが、古びた民家や廃業した店舗は、不動産屋の売り物件情報にはまず出てこない。気に入った空き家が見つかると「思いを綴った」手紙をポストに投函した。これも、意中の経営者をインタビューに引っ張り出す時に使った手である。

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