2024年12月5日(木)

地域再生のキーワード

2014年10月16日

町おこしが必要なのは何も地方に限った話ではない。都会でもそうなのだ。東京のど真ん中にある神田淡路町。住環境の変化で住民が減り続けてきた町が、一人の女性が触媒となることで、新たに生まれ変わろうとしている。

神田の町から望むワテラス (写真・井上智幸)

 「彼女は、数奇な運命をたどって、この町に棲みついてしまったって感じだね」。東京・神田を代表する老舗「かんだやぶそば」四代目の堀田康彦(70)さんは、目を細めてこう語る。彼女とは松本久美さん(33)。神田淡路町を再開発し、2013年春に複合施設「WATERRAS(ワテラス)」をオープンさせた安田不動産の社員だ。

 もともと松本さんがこの町に関わるようになったのは明治大学の博士課程の学生だった5年以上前のこと。再開発の合意形成を研究するためのフィールドワークとしてやってきた。地域の多くの人たちに話を聞き歩くうちに、東京の中でも指折りの「古い町」である神田のコミュニティに徐々に溶け込んでいった。実際には他所から神田に通っているのだが、今では昔からの住民どうしのように迎えられている。

神田小川町界隈
(淡路町、駿河台、須田町など) 人口:1829
世帯数:1047
主な産業:交通の便が良くオフィスビルが立ち並び、明治大、日本大などがある学生街でもある。
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 再開発は千代田区立淡路小学校があった場所を中心に区画整理し、複合ビル2棟を中心とした施設を造るというものだった。主棟は高さ165メートルの高層ビルで低層階はオフィス、高層階は高級分譲マンションとした。背の低いもう1棟には、商業施設や学生マンションが入った。

 再開発前のこの地域の住民はざっと100人。完成後は333戸の分譲マンションを中心におよそ1000人が暮らす町に変貌した。どうやって急拡大するコミュニティを維持・発展させるか。マンション建設でしばしばみられるような新旧住民が分離し、町が二分されては再開発の意味がない。安田不動産にとっても初めて取り組む、都心での本格的な大型再開発案件だった。地元の住民と融和できるかどうかは、会社のブランド・イメージを大きく左右する。


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