中国メディアは何を報じているか

2014年9月12日

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佐々木智弘 (ささき・のりひろ)

防衛大学校人文社会科学群国際関係学科准教授

1994年慶應義塾大学大学院前期博士課程修了。日本貿易振興機構アジア経済研究所東アジア研究グループ長を経て、2014年2月から現職。共著に『習近平政権の中国』(アジア経済研究所)、『現代中国政治外交の原点』(慶應義塾大学出版会)。

情報化とシステム統合に明言

 (1)では、世界の軍事発展の趨勢を、情報化にあり創新を進めていると総括している。この認識を(2)と(3)で言及する中国の軍事改革の重要な根拠としようとしている。

 (2)では、中国の軍事改革も、情報化戦争への適応、新たな軍事理論、体制編制、装備システム、戦略技術、管理モデルの構築にあるとしている。特に新たな体制編制に言及している点が注目される。昨年11月の18期3中全会の「決定」に、「軍隊の体制・編成の調整・改革を深化させ、軍隊の政策制度の調整・改革を推進し、軍民融合のさらなる発展を推進すること」が盛り込まれ、その後大軍区の再編や陸海空の作戦司令体制の再編などの憶測が出ている。そうした憶測を裏付ける発言と言えるだろう。

 (3)では、特に<2>が注目される。「勇気をもって機械化戦争の考え方のパターンを変更し、情報化戦争という思想観念を樹立する」として、機械化から情報化への転換を明確に示した。機械化とは火砲や戦車などハード戦力の重視をさすもので、情報化はハイテクやデジタル化された情報などソフト戦力の重視を指すものである。

 「単一軍種作戦という考え方のパターンを変更し、諸軍兵一体化の連合作戦という思想観念を樹立する」ことは、陸海空三軍がバラバラで作戦を遂行する体制から統合作戦を展開するための組織再編(システム統合)を行うということである。

習近平の権威と権力基盤

 機械化から情報化への転換は、非ハイテク部門や陸軍への配慮から胡錦濤前総書記・中央軍事委員会主席はなかなか決断できなかった。胡錦濤は機械化と情報化のバランスをとるとしか言えなかった。またシステム統合は三軍の利害対立があり、その必要性は理解されながらも実行できなかった。

 習近平が集団学習で軍事改革について、とりわけ情報化とシステム統合について、これだけ明確なメッセージを発したことが報道されたことは、軍内でのコンセンサスがとれているということであり、習近平と胡錦濤の違い、すなわち習近平と軍の関係、習近平軍事指導体制が安定していることを示している。

 6月末に徐才厚の処分が公表されたことも習近平にはマイナスに働いていない。軍内には公表に反対する勢力もいただろうが、公表を支持する勢力、すなわち習近平を支持する勢力がそれを上回っているということである。そして中央軍事委員会副主席経験者を処分し、それを公表したことで、習近平の軍における権威は大いに高まったといえる。

 しかし習近平の軍における権威が高まったことと権力基盤が強まったこととはイコールではない。情報化への転換、システム統合を実行に移すには、この高まった権威を利用して、紅二代(革命軍人の子弟)や習近平の福建省党委員会書記期や浙江省書記期の部下などを軍の要職により多く登用し、実行基盤を整えることができるかどうかにかかっている。

  

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