2024年11月22日(金)

Wedge REPORT

2014年9月23日

 実は14年現在に至るも、国内ゲーム業界の状況は当時とそれほど変わっていない。莫大な製作費を安全に回収するためには、続編か人気アニメ原作しか企画を通せないのだ。

 もう一つ、日本のゲームが世界と戦えない要因がある。「どうやってマネタイズするか、といったビジネス面が後れている」(佐藤氏)というのだ。

 例えば海外ゲームは、企業広告や商品名をゲーム中に表示させるプロダクトプレイスメントに積極的だが、日本ではあまり浸透していない。「日本におけるゲームは、まだまだ『趣味』。アメリカでは『産業』であり『文化』。趣味にはスポンサーという考え方がないですし、日本のユーザーはそういった商売っ気を毛嫌いするので、根付きませんでした」(吉田氏)。

 また、海外ゲームには出資を得るためのファンドが存在するが、日本にはほとんど存在しない。ファンド会社が少ないという事情もあるが、そもそもエンタメ作品の収益性を正当に評価できる人間が金融業界に少ない、という事情もある。

 さらに、アメリカでは娯楽産業の法律まわりを専門に請け負う法律家である「エンタテインメント・ロイヤー」という職業が確立しており、彼らとエージェントがタッグを組んで、資金集めや契約、マーケティング、プロモーションなどを行っている。日本のゲーム業界が世界に打って出るには、まずはビジネスのプロを育成するところからはじめなければならない。

「五右衛門風呂」から脱出せよ

 日本の携帯電話産業はガラパゴス化の末に国際競争力を失い、「ガラケー」と揶揄されるまでになってしまった。結果、日本ではアップルのiPhoneやサムスンのGalaxyといった海外製端末が市場を席巻している。

 現在の国内ゲーム市場も、完全にガラパゴス化しているといってよい。日本製ゲームはごく一部を除いて海外では売れず、海外展開に積極的なメーカーはコナミやカプコンなどごくわずかだ。

 これで国内ゲーム市場が順風満帆であればガラパゴスであっても問題ないのだが、無論そうではない。13年の家庭用ゲームソフト市場は約2537億円(CyberZとシード・プランニング共同調べ)。これはスマートフォンゲーム市場の5468億円の半分以下。この小さな、しかも縮小の一途をたどっているパイを、任天堂やセガ、コナミやカプコンといった大手ゲームメーカーがとりあっているのだ。

 これはまるで、小さな五右衛門風呂にぎゅうぎゅうに詰め込まれたゆでガエルのような状態だ。狭いスペースの争奪戦。しかもお湯は煮えたぎり、苦しみが増すばかりの我慢大会である。しかし世界には大きな市場が広がっている。ガラパゴス化を食い止め、世界市場に打って出るためには、狭苦しい湯船から脱出する覚悟が必要だ。

 日本ゲームが世界を席巻し、再び「ゲーム大国」に返り咲く日は、果たして来るのだろうか?

■編集部より:3ページ冒頭の段落内「『バットマン』や『トゥームレイダー』をはじめとした映画のゲーム化」は、正しくは「『バットマン』や『トゥームレイダー』をはじめとした映画のゲーム化、ゲームの映画化」でした。お詫びして訂正致します。該当箇所は修正済みです。(2014/09/24 17:46)

■編集部より:2ページ冒頭の段落内「100億ドル以上」は、正しくは「100億円以上」でした。お詫びして訂正致します。該当箇所は修正済みです。(2014/09/25 11:40)

 

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◆Wedge2014年10月号より









 

  


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