経済の常識 VS 政策の非常識

2014年10月6日

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原田 泰 (はらだ・ゆたか)

名古屋商科大学ビジネススクール教授

1974年東京大学農学部卒業、博士(経済学)。経済企画庁、大和総研チーフエコノミスト、早稲田大学特任教授などを経て、2015年から日本銀行政策委員会審議委員を5年間務めた。20年4月より現職。『なぜ日本経済はうまくいかないのか』(新潮選書)など著書多数。
 

 一方、生存権を除外した人権には、財政負担がない。これを世界に押し広げることは、リベラルの本気度を示すことになる。保守派の論調は、まあ、それぞれ国によって事情がある訳だからということになるから、これはリベラルとして違いを出せる。世界に押し広げる以上、日本でも本気にならないといけない。

 私は、日本のリベラルが、20日間もの長期の拘束を伴う検察の取り調べに本気で批判的でなかったことは問題だと思う。こんなに長い間、毎日、「吐け」と尋問されるのでは、人質司法と言われても仕方がない。これは、正当な理由がなければ拘禁されないという憲法第34条に反するのではないだろうか。また、これを一つの理由としてアメリカはアメリカ兵士の犯罪容疑に対して引き渡しを拒むのだから、拘束期間を短くすれば、アメリカが引き渡しを拒む理由もなくなるはずである。

違いを見せにくい部分も…

 第3は、LGBT(レスビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)、性同一性障害など、少数派への寛容さの強調である。しかし、そもそもLGBTなどに文化的に不寛容だったアメリカが寛容になり、東京オリンピック・パラリンピック時には日本は寛容さを見せないといけないので、保守派も寛容にならざるを得ない。だから、リベラルの違いを見せにくい。そもそも、戦国武士の多くはバイセクシュアルだった訳で、伝統に回帰するだけのことかもしれない。

 第4は、女性の社会進出への後押しである。ただし、これも違いを見せにくい。保守派は、専業主婦は日本の文化と考えているのかと思っていたら、むしろ女性の社会進出を後押ししている。リベラルとして違いを出すなら、自民党の女性の社会進出がどちらかと言えばエリート女性に傾いているような気がするので、そうでない女性を援助するという姿勢が必要になるのではないか。

 第5は社会保障政策である。しかし、自民党はアメリカの共和党とは異なって、社会保障の拡大に反対な訳ではない。自民党に、共和党のティーパーティーのように、「国民皆保険制度は社会主義で、人民の自由を侵害するものだ」などと言う人はいない。これも違いを見せにくい。

 少数政党であれば、財政を無視してより多くの福祉を唱えていても良いが、政権を取るつもりならそうはいかない。しかも、自民党もかなり財政を無視した社会保障政策をすでにしている訳だから、なおさら違いを見せにくい。

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