2024年12月22日(日)

オトナの教養 週末の一冊

2014年8月28日

 アメリカに関する情報は、日本でテレビなどを観ている限り、政治や経済ニュース、または観光地に関するものなどが多い。しかし、世界をリードする超大国には、独自の正義感と、想像を絶するキリスト教の影響がある。その不思議なアメリカ社会を博物館や美術館といったミュージアムを通して描いたのが『奇妙なアメリカ 神と正義のミュージアム』(新潮新書)だ。今回、著者である矢口祐人・東京大学大学院総合文化研究科教授に、進化論を否定する創造論ミュージアムや、アメリカにおけるミュージアムや記念碑の役割、キリスト教の影響などについて話を聞いた。

――本書ではアメリカにある様々なミュージアムを取り上げながら、アメリカ社会の姿に迫っています。

矢口:アメリカに関する本は日本でも多く出ていますが、ミュージアムの具体的な展示を通してアメリカ社会を考えようというものはあまりないのでは、と自負しています。このような切り口によって、アメリカだけでなく他の国の文化も論じられるのではとも思いますね。

 私が通っていた大学院は、独立宣言前のヴァージニア州の首都であるウィリアムズバーグという街にありました。その街では、独立革命以前の町並みを再現しようと、1920年代にジョン・ロックフェラー2世が巨額の私財を投じたことで、街全体が歴史博物館になっています。そのこだわりようは徹底的で、すべて18世紀と同じ素材、同じ工具、また同じ作り方で家や庭、塀を作っています。

 大学院ではアメリカ史を学び、そのような歴史を感じられる街で生活することによって、アメリカ社会の過去と現在を深く多面的に理解できる環境に恵まれました。

 また、大学院の先生には、ミュージアムの展示にはストーリーがあることを徹底的に教え込まれました。ミュージアムでは、それぞれの展示品をどう並べるかによって、様々なメッセージを発することになると。そうした中で、つくる側もそれを意識しなければならないし、観る側にもそれを読む行為が重要だと教えられ、それからどこの街に行ってもなるべくミュージアムへ行くようになりました。


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