西オーストラリ大学のスプリンガー研究員が、9月17日付National Interest誌ウェブサイト掲載の論説で、豪印原子力協定の締結は、両国の外交関係を強化する第一歩になる、と述べています。
すなわち、最近、アボット豪首相はインドとの原子力協定に署名し、豪州は、初めてインドに民生用のウランを輸出できるようになった。協定は、豪印関係の改善に向けた必要な一歩である。
インドのNPT(核不拡散条約)への署名拒否が、長年にわたり豪印関係を制約してきたが、ウランの取引は、豪州のインドに対するより広い関与の始まりを象徴している。両国は、インド洋の海洋安全保障に利害関係を持っており、二国間の軍事的関係を、この共通の利益に沿って構築し得る。両国の安全保障対話や共同軍事演習等の促進が期待される。
豪印間の経済関係も、さらに深める余地がある。豪州は、貿易パートナーを多様化する必要性を認識し、インドは、豪州の財とサービスにとって、大規模な市場となり得る。インドのエネルギー安全保障上の必要と豪州のエネルギー供給能力が相俟って、関係を強化する。豪州は、当面は石炭を、その後はLNGを輸出して、インド経済を支えることになろう。
インドの核兵器を念頭に、ウランが軍事転用されるのではないかとの懸念があったが、今年の1月にインドはIAEAの追加議定書に署名し、10基の原子炉をIAEAの保障措置の下に置いている。追加議定書は、インドに査察官が入ること、第三国に輸出される全てのウランをIAEAに報告することを求めている。豪州も独自の監視組織ASNO(Australian Safeguards and Non-Proliferation Office)を持っている。
原子力協定は、豪印の信頼を構築し両国の関係を前進させる外交的手段である。経済的手段としては、豪州の資源によりインドのエネルギー需要を満たすことが、前向きな方法であろう、と述べています。
(出典“Australia and India: A Nuclear Alliance?”;Kyle Springer;The National Interest;Sep.17, 2014)
http://nationalinterest.org/blog/the-buzz/australia-india-nuclear-alliance-11298
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豪印原子力協定が、両国関係の強化の第一歩となるというのは、論説の指摘する通りです。豪州からインドへの石炭やLNGの輸出も、もちろん、関係強化に繋がりますが、ウランの輸出には、インドがNPT非加盟であることを、豪州が問題視しなくなるという、外交的に重要な意味があります。