Wedge REPORT

2014年10月23日

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 日本最大規模のサッカートレーニング施設「Jヴィレッジ」のフィールド上に建てられているプレハブの社員寮は1部屋4畳半、部屋と部屋は薄い板で仕切られ、3室隣のアラームで目が覚めるという環境である。「周りの足音が目覚ましだと思って前向きに解釈しています」と現在廃炉を担当しているエンジニアが教えてくれた。「下がる労働条件にJヴィレッジの寮。あれでは辞める人がいて当然ですよ」(退職したエンジニア)。“志頼み”は脆さと同居している。

Jヴィレッジのフィールド上に建つ東京電力の社員寮。部屋を仕切る壁は薄く、3部屋隣のアラームが聞こえる

 新たに原子力エンジニアになろうと思う学生が減少していることも無視できない。「事故後、専攻を決めることになりました。資源のない日本に絶対に原子力は必要だと思い、専攻を決めましたが、事故前と比べ原子力を志望する学生は激減していました」(若手の現役エンジニア)。

 「廃炉がメインと分かって、あえて原子力エンジニアの職を選ぶ学生は少ないと思います」。多くの原子力エンジニアがそう答えた。上位校のトップ層が、原子力を志望する中国とは対極の構図である。

 原子力学科の低迷は、事故前から言われていたことであったが、最近はそれに拍車がかかっている。実は原子力エンジニアの過半は学生時代、化学、機械、電気などを専攻し、原子力を専門にしていない。「原子力学科が衰退しても、エンジニアの多くは元々原子力を専攻していないので、日本の原子力技術が衰退するわけではない」という意見もあるが、最先端の技術開発など、原子力のコアな部分は原子力専攻出身のエンジニアに頼るところが大きい。原子力学科が衰え、志望する学生が減れば、原子力の技術レベル低下は避けられないだろう。

 また、あるエンジニアは「新設の見通しがつかないので、辞める決意をしました」と打ち明けた。新プラントの立ち上げはノウハウ、知識が蓄積する。原子力エンジニアからは新設プラントの建設に関わることを熱望する声を実によく聞いた。世界一原発を造っている中国では、日々、ノウハウや知識が蓄積されているということだ。

 なお、「廃炉を新たな産業に」という声もあるが、福島第一原発で行われている廃炉は、事故処理のための特殊な廃炉であり、通常の廃炉とは大きく異なるためビジネスにはなりづらい。

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