今回、退職者を含め、電力会社、メーカー、研究機関など原子力エンジニア20人以上に接触して、話を聞いた。
「いまもっとも苦労していることの一つが社員のモチベーション維持・向上です」。福島第一廃炉推進カンパニーの増田尚宏プレジデントは言う。
福島第一廃炉推進カンパニーの増田尚宏プレジデント
同カンパニーは、東京電力の社内カンパニーで、震災当時、福島第二原発の所長だった増田氏がトップを務める。三菱重工から鈴木成光氏、東芝から髙山拓治氏、日立GEニュークリア・エナジーから有馬博氏をバイスプレジデントとして迎え入れるなど、電力会社、メーカーが総力をあげて問題解決に取り組んでいる。
取材班は福島第一原発を訪れたが、多くの作業員(1日あたり約6000人)が原発本来の業務とは無縁の作業を行っていた。3時間程敷地内に滞在し、浴びた放射線量は0.01mSv(胸部CTスキャンは約6.9mSv、東京とニューヨークの航空機往復は約0.2mSv)と驚くほど低い値であった。作業環境は向上しているといえるだろう。
はなから廃炉を生業にしたいと思い、社会人生活をスタートしたエンジニアは皆無である。「発電や新設に携わって世の中に貢献したかった。廃炉メインの人生となるとモチベーションを保てなかった」─。東京電力を去った複数の原子力エンジニアがそう話してくれた。
“志”に支えられる廃炉
会社に踏みとどまって、廃炉に身を捧げる者もいる。「自分がやらなければという思いです」─。一部の人間の「志」に支えられて廃炉は成り立っている、という印象を強くもった。