かつて世界で原子力産業のトップを走っていたアメリカは、1979年のスリーマイル島事故の後、競争力を失った。しかし、軍事部門がエンジニアを吸収し、原子力空母や原子力潜水艦などを建造することで、技術力を保った。それが日本ではできないため、原子力の行く末は非常に厳しいといえる。
太陽光発電など再生可能エネルギーの技術は未成熟で、化石燃料依存には様々なリスクも伴うことから、まだまだ原子力が必要な技術であることは多くの識者が指摘する通りである。仮に脱原発を決め、廃炉を進めていくにしても、原子力技術は必要である。
迫りくる中国依存の日
昨年、イギリスはヒンクリーポイントに新設する原発に、中国の資金と技術を導入することを決断した。イギリスでは「安全保障上の問題」として懸念する声があがっているが、国の根幹であるエネルギーの安定供給という重要ミッションを前に、背に腹はかえられない。
東京大学の岡本孝司教授は「このままでは日本でも中国の原発を使う日がくるでしょう」と話す。コスト面で中国を上回ることは難しい。技術を衰退させていけば、日本でも中国の原子力技術に依存する日がこないとも限らない。むしろその兆候は見え始めているといっても過言ではないだろう。
数十年後に「やはり原発が必要だ」と気付いたときにはもう手遅れ、という状況は避けるべきである。日本は、事故を起こしたから、原発を諦めるのではなく、事故から得られる知見をもって、より安全な原子炉を造っていくべきである。
(写真・井上智幸)
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