9月20-26日号の英エコノミスト誌(p.32)は、‘Pax Sinica’と題する論説を掲げ、上海協力機構の拡大や中国主導の多国間機関の乱立など、やり方は秩序だっていないが、中国はアジアを基点に新たな国際秩序を築き始めている、と報じています。
すなわち、中国主導の地域安全保障機関、上海協力機構(SCO)は9月11―12日の首脳会議でSCOの拡大について合意、おそらくインドとパキスタンが来年加盟することになろう。イランも加盟に乗り気だ。8月には、内モンゴルでこれまでで最大の7000人規模の合同軍事演習も実施した。
SCOの推進者たちは、SCOは特定の敵を想定しないパートナーシップだと言うが、実際はその矛先はテロ、分離運動、過激主義に向けられてきた。中国は新彊、ロシアはチェチェン、中央アジア諸国はフェルガナ盆地及びアフガン国境地帯を抱え、加盟国はみなイスラム過激派の脅威に直面している。
ただ、中国もロシアも、SCOをどこまで重要な機関にすべきか、確信がないようだ。中国を除くSCO諸国は、ロシア主導の集団安全保障条約機構(CSTO)にも加盟しており、さらに、ロシアはユーラシア同盟の拡大も狙っている。また、中国も、SCOとは別に、アジア相互協力信頼醸成措置会議(CICA)にも力を入れている。
しかし、中国が推進する多国間機関が乱立し、相互に抵触する可能性にばかり注目すると、肝心な点を見失ってしまう。アジアにおける米国の指導力は、多くの二国間安保条約及び中国の加盟を排除しない複数の多国間機関を基盤としているが、中国が創ったSCO、CICA、「BRICS」、東アジア地域包括的経済連携等は、すべて中国が重要ないし支配的地位を占め、米国抜きであることが共通している。実際、米国はオブザーバーとしてSCOに加わろうとして、拒否された。つまり中国は、単に既存の国際秩序に挑戦しているだけでなく、徐々に、乱雑に、そして、自分でも最終着地点がどこかわからないまま、新たな国際秩序を創り始めているのだ、と報じています。
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中国の意図としては、多数国間機関の設立を利用して、自らの影響力の拡大を図ろうとしている、というのはそのとおりでしょう。ただし、そのような試みが「パクス・シニカ」(中国による平和)と呼べるような新しい国際秩序の創生に至りつつある、と言うのは言い過ぎだと思います。