2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年10月29日

 新しい国際秩序を創り出すためには、単なる経済力と軍事力の増強のみでは十分ではありません。国際的ルールを守る意思があるかどうか、自由、人権など基本的価値を最小限度においても守る意思があるかどうか、などの諸条件を満たさない限り、中国のシステムが世界の他の国々にアピールする力は大きく制限されます。例えば、最近の香港、東シナ海、南シナ海などへの中国の対応ぶりがその典型です。

 それに加え、この十数年間続いた中国の高度成長は、今日、減速しつつあるように見えます。

 本論評の取り上げたSCO、CICA、BRICSなどでの中国の影響力拡大は、中国にとり一定の利益をもたらし得るものではあります。SCO(上海協力機構)はテロ、分離独立運動、過激主義への対抗という共通点を持ち、中国にとってはウイグルの分離独立への牽制となり得るでしょう。ただ、CICA(アジア相互協力信頼醸成措置会議)については、いまだ有効な具体的合意事項を創り出しているとは言えないように見えます。また、BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、南アフリカのグループ)は新興国の雄である国々の集まりとして定着しつつありますが、政治制度は異なり、足並みがそろっているとは言えません。

 もし仮に近隣のASEAN10カ国が、この地域における中国の主導権を容認するのであれば、「パクス・シニカ」が生まれつつあると言っても良いかもしれません。しかし、南シナ海をめぐる最近の中国の独善的拡張主義から見ても、ASEAN全体としての対中国不信感、警戒感は高まりこそすれ、低まることはなさそうです。このように、近隣の国々さえ、中国に主導権をとらせるという雰囲気にはない、というのが実態でしょう。

  
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