2024年4月23日(火)

Wedge REPORT

2014年11月11日

 井口さんのブログからもそんなことが垣間見える。1997年、アップルの『Think different』というコマーシャルの訳文。アップルが出した日本語訳と、井口さんが行った訳では受け取れる意味は同じでも、リズムや、文章から受ける印象は異なる。

職業柄、運動不足になるため「仕事だと思って」昨年からはじめた自転車で、14キロのダイエットに成功した。ひと月に1000キロ走ることもあるという

 Here’s to the crazy ones. The misfits. The rebels. The troublemakers. The round pegs in the square hole. The ones who see things differently.

 アップル訳=クレージーな人たちがいる。反逆者、厄介者と呼ばれる人たち。四角い穴に丸い杭を打ち込むように、物事をまるで違う目で見る人たち。

 井口さん訳=クレージーな人たちに乾杯。はみ出し者。反逆者。厄介者。変わり者。ものごとが世間と違って見える人。

 訳文で異なるのは、「The round pegs~(四角い穴に~)」の部分で、アップルは直訳に近いが、井口さんは「変わり者」と訳している。端折っているように思えるが、後の井口さんの訳文を読めばその印象は変わる。

 They’re not fond of rules. And they have no respect for the status quo.

 アップル訳=彼らは規則を嫌う。彼らは現状を肯定しない。

 井口さん訳=ルールなどわずらわしいだけの人。現状など気にもしない人。

 井口さんの訳は、アップルとはどのような人たちの集団なのか、繰り返し形容していくことで文章にリズムが出るように工夫していることが分かる。


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