2024年12月22日(日)

チャイナ・ウォッチャーの視点

2014年11月14日

 今回、会談を行うに先立ち中国が基本合意を求め公表したのは、恐らく予防措置の一つだろう。基本合意は多くの海外メディアも好意的に受け止められ記事にもされたが、なかでも『ニューヨーク・タイムズ』を筆頭にいくつかの欧米メディアは、「今後の日中関係が進展するか否かは安倍総理の行動次第」といったトーンで書いていたのが特徴的だった。つまり、歴史認識を揺るがす行為――靖国参拝など――に対しては今後は中国だけではなく欧米メディアも厳しい目を向けるといった環境を安倍政権は自ら作り出したということができるのだ。

 それを考慮すれば、無理に会談をするのが良かったのか、疑問を禁じ得ない。

 日中首脳会談を仕掛けるのであれば、来年の秋以降まで時間をかけてゆっくり準備しても良かったのではないだろうか。来年は中国とロシアが「戦勝70周年」イベントを大々的に行い、日本に対し“歴史認識”が厳しく突き付けられる場面が続くことが予想されるのだ。それが一段落したタイミングでも決して遅くはなかったはずだ。

アメリカ、ロシア、インドネシアへの関心

 さて、APECで見るべき点は日中間ではない。逆に外交的に大きな収穫を得た中国の動きだ。

 特筆すべきはアメリカの急接近である。

 2014年11月4日、米ジョンホプキンス大学で米中関係について講演を行ったケリー国務長官は、「米中は建設的に2つの国の間にある意見の違いを乗り越えられていて、協力ができている」とした上で、「米中が協力できれば、いま世界が直面している危機や脅威の多くは解決できるだろう」とまで言ったのである。オバマの大統領のAPEC訪問を控え、リップサービスをしたとも考えられるが、それを割り引いてもアメリカが従来とは違う対中観に傾きつつあることをうかがわせる発言であった。この講演ではさらに、米中関係を「今この時代にとても重要な2カ国間関係」とし、「21世紀の世界の発展を決定する要因」とも語り、CCTV(11月5日放送)が嬉々として伝えたのである。

 同様に中国との関係をアピールしたのはロシアである。プーチン大統領は、「中国との関係強化はロシア外交の最優先課題の一つ」とし、「ロシアと中国のパートナーシップや戦略的関係は歴史上最も強い状態にある」と言い切ったのだ。

 今回のAPECで中国の関心が一にアメリカ、二と三にロシアとインドネシアにあったことはさまざまな点からも見ることができるが、この3カ国とは相思相愛であった印象を残した。


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