2024年7月12日(金)

ちょっと寄り道うまいもの

2009年7月23日

 この二つの業界を、少しでも知っていたら、とんでもないことだと分かる。アルコール、つまり酒に酢酸菌などが働くと酢になる。お酢にしてしまう菌が酒蔵に入ってしまったら、大事件なのだ。ふつうは遠ざける。特に酒の方が。どちらも造るなんて、とんでもない……。それを、やってしまう大胆さ。

 そんな話を、梅を漬け込むところを見せてもらいながら、聞いた。背丈よりも大きなタンク。梅のエキスがよく浸出するように、一旦冷凍した梅を使うことなどを除けば、基本的に家庭で漬けるのと同じような方法。ただし、酒が違う。焼酎ではなく、日本酒なのである。それも、梅酒用に特別に醸造している日本酒。

 「焼酎造りの免許を持っていないので」と雜賀さんは笑うが、思えば、ブランデー仕込みもあれば、ジンやウオツカでも可能である。日本酒でも出来ぬことはないが、酒税法でアルコール度数20度以下の果実酒の自家製造は禁じられている。ただ、そんなことよりも、雜賀さんや梅担当の上田智也さんの話を聞けば、造ろうなどという気が失せる。

 ロックで飲むことを想定したら、氷の溶け具合から考えて、7度以下になると「味がぼける」。そうならぬような度数の設定から、その年の予想される梅の具合から、日本酒の醸し方も変えるような手間。

 梅も違う。さすがに産地。雜賀さんには梅農家の親戚、藪下陸平さんがいる。長年の経験から、梅の種類(南高梅〔なんこううめ〕よりも古城梅〔ごじろうめ〕)から、完熟よりも青い方が良いとかの収穫時期まで指南してくれる。集めてくれる。梅が実る美しい山で話を聞くと、興味は尽きない。

 そんな、あれやこれやのノウハウから、この素晴らしい梅酒が出来上がっていた。梅酒ブームのきっかけになったのも納得の梅酒。

雜賀俊光さん(右)の梅酒造りを梅農家の藪下陸平さんが支える

 ふつうの梅酒だけでなく、にごりや黒糖、さらにはシャンパンのように瓶内発酵させたものまで、種類も増えている。

 和歌山県、かつての紀州には水はけが良すぎたりで、田畑に適さず、貧しいところが多かった。その土地が梅には合った。江戸時代から藩の産業育成策もあり、名物となっていった。もとより、梅干しが中心であったが、今、梅酒も和歌山の名物になりつつある。

 熊野古道や高野山、南紀白浜等々和歌山は訪れるべき場所に事欠かない。その旅のついでにあちこちに広がる梅林を見たりも一興かと。そうそう。和歌山市内に、そこでお昼を食べるためだけに訪れても良いと思わせる食堂があるのだけど、その話はまた、改めて。

 

■バー・テンダー
紀勢本線和歌山駅下車、徒歩約10分
和歌山県和歌山市楠右衛門小路11 谷口ビル1F
☎073(427)3157

■九重雜賀
和歌山県岩出市畑毛49─1
☎0736(69)5980
※一般の販売や見学は行っていません

◎和歌山市内の「雜賀梅酒」取扱店
■酒の藏
南海加太線東松江駅下車、徒歩約15分
和歌山県和歌山市土入73─1 
ウジタフード・コート店内
☎073(452)7121

◆「ひととき」2009年8月号より

 

 


 

 

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