しかし、各国の国内政治や、国際的コンセンサスの欠如、そして米国の影響力の低下を踏まえれば、成し遂げられることには限界がありそうである。それ故に、これからの世界で享受できる平和や繁栄は、ポスト冷戦期よりも少なくなるだろう、と述べています。
出典:Richard N. Haass ‘The Era of Disorder’ (Project Syndicate, October 27, 2014)
http://www.project-syndicate.org/print/new-era-of-global-instability-by-richard-n--haass-2014-10
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リチャード・ハースは米外交問題評議会の会長であり、米外交界の重鎮です。彼の意見は傾聴に値します。
現状認識として、国際秩序・規範への挑戦は、ロシアのクリミア併合、中東でのISIS台頭とサイクス・ピコ協定への挑戦、中国の南シナ海や東シナ海での振る舞いが代表的なものですが、他にも数多く見られます。世界が無秩序化しているのはその通りです。その一因は、米国が国際秩序維持のために十分な指導力を発揮していないとの指摘もそのとおりでしょう。
そして、こういう現状を踏まえてどう対処するか、今後どうなるかの見通しが問題です。
現在の無秩序化の傾向をやむをえないものとして受け入れるのではなく、その傾向を逆転させるべく努力すべきでしょう。逆転の可能性がなければ、そういう努力も無駄でありますが、逆転の可能性は十分にあります。
まず、米国は人口も増えており、経済も好調で、衰退はしていません。オバマ大統領が対外関与に消極的で、アフガニスタンやイラク戦争に疲れた国民もそれを支持したという事情があり、オバマゆえに米国は国際秩序維持の役割を不十分にしか果たさなかったと言えます。ポスト・オバマでは、それが是正される可能性があります。
ロシアは旧ソ連よりずっと弱く、衰退しています。ISISもアルカイダよりはずっと強いですが、中東の他の勢力と比較すれば、まだ弱いです。
世界の規範を変えて新時代を作れるような力を持った勢力は、中国くらいしかありません。しかし、米国、欧州、日本、インドなど、既存の国際秩序・規範を維持する勢力が努力をすれば、世界の無秩序化は逆転できるように思われます。
日本にとって国際規範が尊重される国際社会が国益に沿います。国際規範をないがしろにしているロシアにも、はっきりとG7と協調して厳しく対処していくことなどが必要です。
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