2024年12月12日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年6月2日

 4月29日付Wall Street Journal紙で、Richard N. Haass米外交問題評議会会長が、「混沌を弄んでいる米外交:無能さの最も目立つケースはシリア」との論説を寄せ、オバマ外交を批判するとともに、今後の政策について提言しています。

 すなわち、米外交は混乱している。米外交の指導概念は、オバマ1期目のアジアへの回帰、中東重視の転換であるべきである。オバマ政権はこの概念の実施で欠けるところがあった。最近のオバマのアジア歴訪はこれまでの努力不足を埋め合わせたとは言えない。

 オバマ政権は、イラクからもアフガンからも撤退しようとしている。しかし、オバマ政権は、引き続き中東での野心的な目標、レジーム・チェンジを、ムバラク、カダフィ、アサドの例などに見られるように追求している。しかし、指導者を追い出すのは容易ではない。その後に米国の好みに合う安定した政府を作ることは大変難しい。その結果、米国は目標から後ずさりし、無能に見えるか、あるいは目標達成のために巨大な資源を使うかの選択に直面する。

 オバマ政権は大体、第1の選択、すなわち無能に見える方を選んできた。シリアが良い例である。アサドはやめるべきと言いつつ、そのためにほとんど何もせず、反政府派への軍事支援は最小限しかしなかった。化学兵器使用後も、武力行使を避け、米国の信頼性への疑念を広め、反政府派の能力を弱めた。中東でテロリストの足場は拡大している。

 オバマ政権のイスラエル・パレスチナ紛争解決への努力も正当化しがたい。最近の話し合いの決裂の前にも、この紛争は解決に熟しておらず、もはや中東情勢の中心課題ではない。パレスチナ国家樹立は、シリア、エジプト、イラク問題を解決しない。

 オバマ政権は、イランの核問題では、イランを交渉に向かわせた制裁強化をした。これは称賛されるべきである。今後は、良い合意を作るという課題がある。

 これらの外交努力は時間を要する。国務長官の時間は限られている。アジアでは、日中韓などとの定期的協議、危機防止、危機管理がいる。もっとそちらに時間を割くべきである。

 米国は欧州への関与も増大すべきである。クリミア、ウクライナへの対応がある。


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