2024年12月19日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年6月2日

 米国の社会・経済の強靭さは国家安全保障政策を代替するのではなく、その中心にある。エネルギー開発、移民改革、インフラの近代化、自由貿易などに取り組む必要がある。

 オバマ政権は、単に米国の力の強化、孤立主義に対する国際主義を確保するのみならず、他国にメッセージを送るべきである。ポスト・アメリカの世界への動きがあるが、これは米国の利益に沿わない混乱した世界になろう、と論じています。

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 ハースは米外交評議会会長の肩書が示すように、今や米国の外交界の重鎮です。多くの人が彼の意見を尊重します。

 ハースがここで述べているオバマ政権の外交批判は的を射ています。

 シリアでの化学兵器使用はレッドラインと言いながら、使用された時に何もせず、米国の信頼性を大きく傷つけました。中東ではレトリックとしての政策目標と、そのために使う手段や力との間に懸隔がありすぎて、米国が無能に見えることが多いのもその通りです。

 そういう中で、アサドやプーチンが米国のことを軽く見ていることは容易に想像されます。米国の信頼性が低下した世界は、秩序なき世界になる危険があります。

 米外交界の重鎮であるハースが、アジア重視を政策概念として良いと主張し、確実に実施するのが肝要であると述べているのは、歓迎すべきことです。中国をどうするかが今後の世界にとり大問題との意識があるのでしょう。アジアでは米国がその信頼性を保つように是非してほしいと思います。

 ハースは、中東和平について、ケリー長官の努力を正当化できないと言っています。ハースは、かつて、紛争解決について、ripeness theoryというものを唱導した本を書いています。要するに、紛争は解決のために機が熟した状況で解決に至る事を、諸事例を引用して説明した名著です。そういう彼から見ると、ケリー長官の中東和平仲介はドンキホーテ的試みに見えたのかもしれません。

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