2024年11月26日(火)

Wedge REPORT

2009年7月17日

 同社ではHALを利用する施設関係者に対して、納入の際に5時間程度の安全取り扱い研修を行い、さらに理解度を示す試験も課しています。試験合格者をHAL取り扱い認定者として、その立会いの下で日々の訓練を行うというように、安全面には万全の注意を払っているのですが、本格的に普及するには高い壁があり、単体事業として黒字をだすところまではいっていないのが実情のようです。

 日本は工場内で溶接作業等を行う産業用ロボットでは、世界シェア7割(出荷ベース)を誇るロボット大国です。介護・医療や家庭用といった生活支援ロボットの分野では、この福祉用HALに限らず、施設内で来訪者に案内業務等を行う三菱重工業のコミュニケーションロボット「wakamaru」や、富士通の「enon」などが事業化されていますが、いずれも黒字化には成功していません。むしろ、事業化という点では海外勢に後れを取っています。

隠れたプレーヤー富士重工業

 東京・晴海のトリトンスクエア。おしゃれなレストランや雑貨店が並ぶエリアに併設されたオフィスビル内では、深夜になるとどこからともなく機械音が響き渡ります。音の主はドラム缶のような体をしたロボット。ボディ下部にある吸引機でカーペットのゴミを吸い取り、自動でフロアを一巡すると、エレベーターに信号を送り別の階に移動します。

 富士重工業が開発したお掃除ロボット「RFS1」。国内のロボット業界関係者の間では「国内で唯一黒字化している」といわれています。同社クリーンロボット部部長の青山元氏は「ロボットを販売するのは本当に大変だった。研究所の中で研究に没頭していたときのほうが楽だった」とこれまでの苦労を語りました。

富士重工業のお掃除ロボット「RFS1」

 このクリーンロボット部を2002年に立ち上げた際、青山氏は上層部から「黒字化できなければやめてもらう」といわれたため、必死に市場開拓をしてきました。例えば、人間による夜間の清掃業務では人によって掃除の質にバラツキがでることを発見し、ロボットならば高い質を保つことができることをアピールポイントにしました。また、ある一定規模以上のビルならば人間よりロボットを導入したほうがコスト安になることも立証し、時には条件に満たないお客さんを断ったこともあったそうです。

 RFS1は清掃以外でも、ツムラの漢方製剤工場でも薬品搬送用として活躍しています。建物自体が狭く密閉された構造になっており、製造ラインが狭いといった理由で、従来の搬送機構では対応できなかったため導入されたとのことです。現在、「他の工場からの引き合いも強いが、ロボット技術者の数が足りないので広げられない」と青山氏はうれしい悲鳴を上げています。

生活支援ロボが頭打ちの理由とは?

 世界的にも高い技術力を持つ日本の生活支援ロボット。しかしながら、事業化で大きく成功している企業が富士重工業以外に見当たらないのはなぜなのでしょうか。


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