この石はやはりイサム・ノグチが愛した石で、結局は最後まで手をつけなかった。この築山の上に置かれる姿を、自分の分身とするイメージがあったようだ。
山を降りて、イサム家の縁側でぼんやりする。ここもそうだが、気分がじつに清々しい。「エナジー・ヴォイド」の蔵の地面は三和土(たたき)みたいだったが、周りを掃いた箒の目がきれいだった。屋外展示の地面もきれいに掃き清められて、踏み歩くのに気がひけたほどだ。ほかのことはともかく清浄だけはいつも心がけるように、とイサム・ノグチは言い残していたという。作品という焦点を作るのが環境であるというような、この作家の心がにじみ出ている。今年は没後20年、開館10年で、秋には美術館のカタログが作られ、記念イベントが予定されているそうだ。
(本文中写真:川上尚見)
【イサム・ノグチ庭園美術館】
〈住〉香川県高松市牟礼町牟礼3519 〈電〉087(870)1500イサム・ノグチは彫刻作品の制作だけにとどまらず、庭や公園の環境設計、家具や照明のインテリア、舞台美術など多方面にわたって活躍した芸術家。1956年に庵治石の産地・香川県牟礼町を初めて訪れた後、69年からアトリエと住居を構えて日本での制作拠点とした。イサム・ノグチ庭園美術館は99年、そこへ生前の雰囲気そのままに開館。150点あまりの彫刻作品、自ら選んで移築し手を入れた展示蔵や住居だったイサム家、完成までに10年ほどを要した彫刻庭園などからなり、全体がひとつの“環境作品”となっている。
※入館は予約制です。往復はがきにて日時を指定してお申し込みください。〈開〉火・木・土曜の10時~、13時~、15時~(1日3回)
〈休〉月・水・金・日曜、夏期8月12日~17日、冬期12月28日~1月7日
夏期、冬期は年度により変更あり
〈料〉一般・大学生2,100円 高校生1,050円 中学生以下無料
■「WEDGE Infinity」のメルマガを受け取る(=isMedia会員登録)
週に一度、「最新記事」や「編集部のおすすめ記事」等、旬な情報をお届けいたします