2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年2月26日

 オバマの一般教書演説につき、ワシントン・ポスト紙は2本の社説を掲載し、オバマが示した中間層優遇政策は民主党と共和党の亀裂を深めるであろうと指摘する一方、自由貿易、特にTPPの推進は数少ない期待できる課題である、と述べています。

 まず、1月20日付け社説の要旨は次の通りです。

 すなわち、昨年の国際情勢の展開を考えると、一般教書演説での内政問題重視は際立っていた。

 オバマが示した経済政策は、民主党を「中間層の党」とイメージづけたいという意図によく適合しているように見える。今後10年で、富裕層に対して3200億ドル増税し、そのうち1750億ドルを中間所得層の子育てと教育に当てるとしている。

 共和党が大規模な税制改革に明確に反対しているので、いずれの増税も超党派の賛成を得られる可能性は皆無である。一般教書演説は、民主・共和両党の差異を拡大させるものであり、経済の回復を超党派的動きに結びつけるようなものではなかった。僅かな希望は、貿易に関することである。オバマが環太平洋国家および欧州との市場開放交渉を推進すると約束したことを共和党は称賛した、と述べています。

出典:‘Mr. Obama’s policy goals may be too ambitious with a Republican Congress’(Washington Post, January 20, 2015)
http://www.washingtonpost.com/opinions/mr-obamas-policy-goals-may-be-too-ambitious-with-a-republican-congress/2015/01/20/60002b36-a0e4-11e4-b146-577832eafcb4_story.html

 そして、1月22日付社説の要旨は次の通りです。

 すなわち、これまで、オバマの自由貿易協定への支持は不十分であったが、一般教書演説では、大統領はアジア、欧州との新たな貿易交渉により米国労働者を保護すべく、両党に通商一括交渉権(TPA)を求めた。

 興味深いのは、貿易交渉を支持するオバマの論拠である。オバマは、自由貿易協定を、中国を犠牲にして米国の雇用を支える手段として新たに位置付け、「今日、我々は今までになく多くの輸出をしており、輸出業者は労働者により多くの賃金を払っている」「しかし、中国は、中国主導のルールを作りたがっている。それは、米国の労働者とビジネスに不利益を与える」と述べた。

 大統領の1点目の指摘は、貿易反対の論拠にしばしば用いられるゼロ・サム的思考への、正確かつ歓迎すべき反論である。2点目は、TPPの広範な戦略的正当性について指摘している。概してアジアの国々は、中国の影響力へのカウンターウエイトとして、米国の地域へのプレゼンスを求めている。環太平洋貿易を中国の重商主義ではなく米国の自由貿易の原理によって組織化する協定は、アジア太平洋の国々、そして米国の死活的な利益である。


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