元米国家情報長官、元米太平洋軍司令官のデニス・ブレアが、11月5日付ニューヨーク・タイムズ紙に、中国が低いレベルの通商ルールを作ろうとしている今こそ、TPP交渉を小さな問題にとらわれずに早期に妥結にもっていくべきである、との論説を寄稿しています。
すなわち、米日がTPPの最後の詰めをなかなかできずにいる中、中国が21世紀のアジア・太平洋の通商関係を決めようと動いている。
TPPは規制システム、知的財産権、公正な競争について高い基準を作る。中国は、今はまだその基準を満たせない。そこで、中国はアジア・太平洋自由貿易圏(FTAAP)という代替案を推進している。日米のTPP反対派は、TPP合意を脱線させようとしている。TPPができないと、重商主義的政策をとる中国のような国がアジア・太平洋の通商規則を決めてしまいかねない。
中国は、日米のような民主主義国は圧力団体の利害に気を使うことを知っている。少数派は多数派から守られる。しかし、圧力団体の利益は、全体の利益を考えた妥協の中で守られるべきである。米日の間では、豚肉生産者のことでは議論が行われるが、より大きな国益は見失われている。TPPがアジア・太平洋での米日の指導力を確立することは、あまり指摘されない。
今こそ、合意を達成するために必要な妥協をする時である。小さな問題で合意に失敗してはならない。
TPPは米日主導のビジネスの枠組みを提供する。またTPPは、TPPの高い基準を満たしさえすれば、中国を含めたあらゆる国に対して開放される。中国は、TPPへの参加に関心を示している。中国が参加すれば、この世界第2の経済大国は、自由市場国が作った規則に従って発展することになる。
中国はTPPが米日同盟を強化すると知っている。この同盟こそ、アジアの経済的奇跡を可能にした地域安保の基盤である。TPPは追加的な戦略的結びつきになる。