2024年4月26日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年12月9日

 TPP合意に失敗することは、酷い後退になる。規則に基づく地域経済システム樹立の代わりに、相互非難などが米日間に出てくる。オバマ大統領も安倍総理もTPP合意のために大胆な行動をする時であると言った。中国の動きもあり、合意の緊急性は高い、と述べています。

出典:Dennis C. Blair,“Who Decides Pacific Trade?”(New York Times, November5, 2014)
http://www.nytimes.com/2014/11/06/opinion/who-decides-pacific-trade.html?_r=0

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 APEC首脳会議のホストとして、中国は、自由貿易に関する声明を発出し、この論説も指摘している、FTAAPの推進を呼びかけました。これに対して、TPP交渉は、圧力団体の主張に振り回され、大きな国益が忘れられ、行き詰まりを見せています。

 ブレアは太平洋軍司令官を務めた軍人であり、その後は米の情報機関のトップを務めた人で、通商交渉は専門ではありませんが、この論説から、アジア太平洋の自由貿易をめぐる現状と課題をよく理解していることが分かります。

 TPPについて、対中関係など広い視野で考え、それが日米間で合意されることの重要性を指摘しているのは、適切な提言です。要するに、中国主導でFTAAPのようなものが推進される前に、日米主導のTPPが合意されなければならないということです。

 11月の米国の中間選挙では、共和党が上下両院を制しました。共和党は自由貿易を支持する傾向がありますから、TPP交渉にはプラスになると言ってよいでしょう。TPP交渉に不可欠な、通商交渉に関するファスト・トラック権限(一括交渉権)の大統領への付与も期待できます。他方、個別利益と貿易障害の排除が密接に結びつく場合には、対日要求が強くなることもあり得ます。日本としては、少数の利益に拘って、貿易障壁撤廃の要求に対して、頑迷に抵抗し過ぎるべきではないでしょう。

 日米主導でアジア・太平洋の通商ルールを決めることの重要性をしっかりと認識することが何よりも肝要であり、TPP合意だけのために日米首脳会談を開くくらいの価値のある問題です。TPP合意は、もはや内政ではさしたる成果を上げることが期待できないオバマの遺産としての成果にもなり得ます。そして、アベノミクスの第3の矢の推進という意味もあります。

  
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