2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年2月20日

 元米国防次官のミシェル・フロノイとマケイン上院議員の元外交アドバイザーのリチャード・フォンテインが、2015年1月16日付の米ワシントン・ポスト紙に、「分裂した政府が国益を守るために取りうる諸措置」と題する論説を寄せ、超党派でいくつかの外交・安保政策上の措置をとることを提言しています。

 すなわち、米国は、指導部が超党派で外交ビジョンを打ち出し、広い国民の支持を維持するときに、最強である。分裂した米政府が、超党派で対応できる国家安全保障問題には次のものがある。

 第1:通商推進権限(TPA)とTPPの議会承認。ここ6年、韓国、パナマ、コロンビアとの自由貿易協定ができたに過ぎない。特にアジアでは米国が参加しない通商取決めが増えている。TPPをやり遂げることは米経済のためになり、アジア関与の強化になり、欧州とのTTIPへの道も開く。

 第2:強制予算削減をやめること。これは共和党、民主党に税制と社会保障給付での妥協を促すためのものであったが、その効果は出ていない。大規模な防衛予算削減は防衛力を弱めている。議会と大統領は2016年の予算強制削減を取りやめ、国防長官に最優先事項への予算配分をする柔軟性を与えるべきである。

 第3:2016年末までにアフガンから全兵力を撤退するとの大統領計画の撤回。これは13年間の連合軍、アフガン治安部隊の努力の成果を無にし、撤退後のイラクの二の舞いになる。状況に応じた撤退と時間割の変更を考えるべきである。

 第4:武力行使権限法(AUMF)を改定し、シリアの反対派への意味ある支援をすべきである。2001年のAUMFに、対象として「イスラム国」を明確に含むべきである。シリアでの穏健な反対派への軍事支援を実施し、シリアでの和平交渉への道を開くとともに、イラク政府とスンニ派、クルドとの関係改善に努力すべきである。

 第5:原油輸出を許可し、LNG輸出許可を拡大し、米国のエネルギー生産国の地位を活用すべきである。欧州、アジアのロシア、イランへのエネルギー依存を減らすべきである。

 第6:NATOの抑止を強化し、バルト諸国やポーランドを安心させるとともに、ウクライナへの経済・軍事支援を増やすべきである。


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