2024年12月7日(土)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年12月23日

 エコノミスト11月15-21日号は、環太平洋地域は米中間の大国の争いに脅かされ、パクス・アメリカーナは不安定な勢力均衡に取って代わられようとしているが、ルールに基づく国際体制が利益になることを理解すべきである、という記事を、巻頭論説として掲載しています。

 すなわち、第二次大戦以降、アジアの安全を保証してきたのは米国の海軍力であり、中国もパクス・アメリカーナを容認してきたが、そうした時代は終わった。

 アジア太平洋において、パクス・アメリカーナは、競争と不安定な勢力均衡に取って代わられようとしている。中国は、米国の同盟関係、外国の支援を受けたNGO、香港や新彊の抗議運動など、至る所に米国による中国の台頭阻止の動きを感じ、他方、アジアの中小国は、中国の強硬な領有権の主張や高圧的言動に脅威を感じている。武装化も進んでおり、2014年までに5年間の世界の兵器輸入の47%はアジアが占めている。

 勿論、米国は現状維持を望んでいるが、その外交は分裂気味で、対アジア「ピボット」や「リバランス」は、同盟国を安心させるよりも、中国の被害妄想を煽ってしまった。中国が評価している西側主導の商業ルールでさえ、米国が中国の将来のTPP加盟について曖昧なため、緊張の種になっている。また、今の中国は、国際機関でより大きな役割を果たしてしかるべきなのに、米議会は中国に影響力を与えまいとIMFの改革を妨害してきた。

 こうしたことが、中国を独自の貿易取り決め・開発銀行・地域安全保障グループの創設へと駆り立ててきた。しかし、開発銀行自体は有用かもしれないが、こうしたやり方は中国にもよい結果をもたらさない。中国の繁栄にとって不可欠な国際貿易・国際金融・航行の自由・気候変動への取り組み等の国際体制の弱体化につながるからだ。

 アジアの大国は、類似の体制を創って対立を助長するよりも、現行の体制への適応に務めるべきであり、その際、模範になれるのは貿易分野だろう。米国がTPPを対環太平洋コミットメントのシンボルとし、中国の参加を強力に押し進めれば、米国は包括的国際体制を望んでいることを示せる。また、TPPは、北京のナショナリストたちに対しても、大国同士の争いよりもルールに基づく国際体制の方が中国の利益になることを示せる。


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