世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2014年12月23日

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 第一次大戦の勃発は、勢力均衡による平和維持がいかに難しいかを思い知らせる。欧州は、大量の血を流してやっとNATO・国連・EU等が国際関係の維持に必要なことを理解したが、環太平洋地域は平和的方法でそうした理解に至ることを願う、と述べています。

出典:‘Bridge over troubled water’(Economist, November 15-21, 2014)
http://www.economist.com/news/leaders/21632452-weeks-summit-beijing-helped-great-power-rivalry-still-threatens-pacific-bridge

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 この論説は、アジアでのパクス・アメリカーナが終わりつつあり、競争と勢力均衡にとって代わられつつあるとの情勢認識を示し、その上で、中国に対してはこれまでの国際機関に取って代わるような機関を作るより現行体制に適応するように、米国に対してはTPPへの中国の参加を推し進め、包括的国際体制を希求していくようにすることを勧めています。そして、それが20世紀初めの欧州が第1次大戦に向かって行ったような事態の回避につながる、と論じています。確かに説得力もありますが、少し現実離れした論でもあります。

 中国はいまIMFに代わる国際金融機関、世銀やアジア開発銀行に代わるアジア・インフラ投資銀行、TPPに対抗する自由貿易協定推進など、米国が1945年に作った金融、貿易体制に挑戦する態度に出ています。この記事は、それを批判しているわけですが、中国が態度を改めるのは、中国の構想が成功しないと分かった時でしょう。したがって、こういう挑戦には、その実現の困難性を知らしめていくことが既存秩序を守るためには正解と思われます。

 TPPへの中国の参加については、中国がTPPで求められる高い水準の自由化その他を受け入れるのであれば、中国の参加を歓迎すればよいでしょうが、中国のTPPへの参加は、あり得るとすれば、中長期的な話です。

 しかし、「戦争か平和か」については、政治・軍事問題の方がより重要です。中国は過去に傷ついた大国として富国強兵に猛進しているところがあります。勢力均衡では不安定な平和にしかならないかもしれませんが、それ以外に中国の動きに対抗する道はありません。国連に頼ったりするようなことでは対処できません。

 この論説は、良い論説ですが、同時にパクス・アメリカーナを過去のものとし過ぎています。中国の挑戦が成功するとは限らず、強固な同盟と米を含む各国の努力次第で、パクス・アメリカーナに支えられた、国際法に基づく既存秩序(海洋法秩序、国家平等の建前など)が有効な状況はまだ続きうると思われます。

  
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