2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年2月26日

 経済的にも地政学的にも、TPPは、アジアを安定させる米国の役割を永続させることになろう。それは、オバマ政権の最も良い考えの一つである。大統領と共和党指導者は、約束を守り、これを実現させなければならない、と主張しています。

出典:‘The Trans-Pacific Partnership can help the U.S. counter China’s expansion’(Washington Post, January 22, 2015)
http://www.washingtonpost.com/opinions/the-trans-pacific-partnership-can-help-the-us-counter-chinas-expansion/2015/01/22/08e3694a-a1a6-11e4-b146-577832eafcb4_story.html

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 オバマ大統領の今年の一般教書演説は、内政面、特に中間層を優遇する経済政策に重点が置かれ、外交政策に関しては内容に乏しいものでした。

 オバマは一般教書演説で、中間層を重視することこそが米国に繁栄をもたらすとして、富裕層の増税、中間層の減税、中間層の税額控除のための株式譲渡益課税の強化、最低賃金の引き上げ、有給で病欠をとれる制度の導入、コミュニティ・カレッジの無料化などの政策目標を掲げました。これらは、全体としてリベラル派の核心的政策であり、共和党の支持が得られる可能性はまずありません。オバマの演説は、共和党と協調する姿勢を示すどころか、オバマの政策に反する法案が成立する場合には拒否権を使うと何度も述べ、むしろ、共和党に対し強気の姿勢を示しています。最低賃金の引き上げに関連して、オバマは列席の共和党議員に対し、「年15,000ドルで家族が養えると思うなら、やってみたらどうだ。もし無理なら最低賃金引上げに賛成票を投じるべきである」と述べ、共和党に対し、挑戦的とすら思える発言をしています。中間選挙で大敗した大統領の演説とは思えません。

 何故オバマがこのような演説をしたかについては、オバマの中間層重視策に共和党の協力が得られる可能性がまずないとの認識に立って、この際、米国民に民主党の中間層重視策の正統性を強くアピールしようとしたことが考えられます。共和党に「挑戦状」をつきつけるような政策と姿勢を打ち出し、議会が承認しないことで、政策が前進しなければ共和党への批判が高まる、というシナリオを狙ったようにも思われます。演説の真の狙いは、来年の大統領選挙戦でヒラリー・クリントンを勝たせるための地ならしをすることである、という観測もあります。

 オバマの動機が何であるにせよ、今回の演説により、新しい米議会で共和党との協調が期待できないことは明らかとなりましたが、その中での例外がTPPであり、1月22日付の社説が述べている通り、オバマと共和党指導者がその推進に向けて協力することが期待されます。そして、自由貿易協定を促進する論拠として、オバマが米国の労働者保護を打ち出しているのは、社説の言う通り、興味深いロジックであり、民主党内の保護主義的反対派を抑える一定の効果を持つかもしれません。

  
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