2024年4月25日(木)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年3月9日

 記事の中のコメントから、戦後70周年の軍事パレードの重点が、第一義的には習近平の権力掌握を内外に示すことにあることが理解できます。とりわけ「大トラ」として退治したのが、軍の大物である徐才厚および治安と法執行を担当した周永康であることから、習近平が軍と治安機関をしっかりと掌握したことを国内に示したいのでしょう。そのことを通じ、習近平への権力の集中を実感させ、中国共産党にとって現時点における最大の課題である「改革の全面的深化」(2013年三中全会決定)を推し進めたいということなのでしょう。

 同時に、中国の国力と軍事力を誇示したいという願望も見えてきます。これも、中国はこれほどの軍事大国になったのだということを国民に見せて、国民のナショナリズムを満足させ、党と習近平への支持を強める狙いがあるのでしょう。

 軍事パレードの開催において、日本ファクターをどう位置付けるかについては、二つの方面からアプローチできます。

 一つは、習近平政権になってから意識的に進められている抗日記念活動の強化の流れです。この主たる目的が国内の社会の凝集力の強化にあり、副次的に日本が巻き込まれたということになります。

 この関連で、1995年に江沢民が自分の権威を高め、権力を強化するために行った演出が気にかかります。7月7日の盧溝橋事件の日から9月初めまで続いた抗日戦争勝利50周年記念行事を、江沢民は積極的に主導しました。習近平政権の抗日記念活動の強化は、昨年から目につき始めました。9月3日を抗日戦争勝利の記念日とし、12月13日を南京大虐殺の犠牲者追悼日にして行事を行っています。

 二つ目は、日中関係の今後の展開という側面です。日中関係が良くなれば中国側にも自制が働きます。戦後70周年の首相談話と日中関係を前に進める仕掛けがカギとなりますが、前者については5月の連休に想定されている総理訪米が極めて重要になります。ここで日米のすり合わせがなされ、その内容が首相談話に反映されれば、本年の戦後70周年は、日本にとってプラスとなるでしょう。後者については、今年の前半、日中間に首脳を巻き込む行事がないことから、取り掛かりをつくるのが難しくなっています。この観点からみれば、日中韓三国外相会談が動き始め、首脳会談も実現すれば、打開の道は開けるでしょう。

  
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