2024年11月22日(金)

メディアから読むロシア

2015年4月1日

7. これらの親露的キャンペーンには、ロシア及びウクライナの報道関係者を同席させることが必要である。

このキャンペーンには、ウクライナの東西分離主義に関するマニフェストのような概念的文書を作成し、メディアに回覧することが含まれる。ロシアの広範な各コミュニティは、ウクライナ東部諸地域のロシアへの編入に対して支持を表明するであろう(この際、「最高会議再建2.0」というスローガン[訳註:親西欧派によって用いられた]に鑑みれば、「プーチン2.0」がスローガンとして考えられよう)。

「連邦化」の名の下に

 以上に見られるように、マロフェーエフ提案では、「連邦化」または「国家連合化」を口実として実質的にウクライナ東部をロシア領に編入してしまうとの筋書きを描いている。実際、クリミア併合後に紛争がウクライナ東部諸州に飛び火すると、ロシア政府は紛争の収拾案として「連邦化」を提起し、さらに親露派武装勢力を「連邦制支持者」と呼び代えていた時期もあった。

 これについて、我が国でも「連邦制は民族的対立を吸収する仕組み」であるとして好意的な評価も見られたが、その文脈を見れば、これが一般的な意味でいう「連邦化」とは全く異なったものであることは明らかである。

 マロフェーエフ文書のいう「連邦化」とは事実上、ウクライナを分割する方便に過ぎない。一方、後にロシア政府が持ち出した「連邦化」は、親露派の支配するドネツク及びルガンスクに外交政策上の拒否権を与えること(つまりキエフの政権がNATOやEUへの加盟を打ち出せば阻止できる)や独自軍を保有することなどであり、細部は異なるものの、「連邦化」の名の下に東部を独立国家化させようとしていた点は共有している。

 もちろん、マロフェーエフ文書は一実業家がかなり偏った観点から執筆したものに過ぎず(もっとも、本人はこの文書を書いたことは否定している)、ロシア政府の対ウクライナ戦略にどれだけ反映されたか疑わしいことは前回述べた通りである。また、今回紹介した部分でも、前回と同様、とても国際的に通用するとは思われないような手前勝手な論理が書き連ねられており、陰謀論としてもあまり出来のよいものとは思われない。

しかし、最終的な落としどころを「連邦化」に求めるという点は非常に興味深く、実際にプーチン政権の戦略に何らかの影響を与えていた可能性は排除できない。少なくとも、ロシア側の狙いの一端をこの文書が明らかにしていることはたしかであると思われ、それゆえ突っ込みどころは満載ながらここで紹介している次第である。

 このような観点からすれば、「ミンスク2」に盛り込まれた「脱中央集権化」に対してウクライナ側が警戒的な理由も理解できよう。この文言が誰の発案で盛り込まれたのかは明らかになっておらず、その意味するところも明示されてはいないが、最終的にはマロフェーエフ文書やロシア政府が昨年の段階で提案していた「連邦化」(あくまで括弧付きの)であることは想像に難くない。


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