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2015年4月1日

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小泉悠 (こいずみ・ゆう)

東京大学先端科学技術研究センター特任助教

1982年生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科修士課程修了。民間企業を経た後、2008年から未来工学研究所。09年には外務省国際情報統括官組織で専門分析員を兼任。10年、日露青年交流センターの若手研究者等派遣フェローシップによってモスクワの世界経済・国際関係研究所(IMEMO)に留学。専門は、ロシアの軍事・安全保障政策、軍需産業政策など。著書に軍事大国ロシア』(作品社)、『プーチンの国家戦略』(東京道堂出版)、『「帝国」ロシアの地政学』(東京堂出版)。『ロシアの軍事情報を配信するサイト「World Security Intelligence」(http://wsintell.org/top/)を運営。

和平プロセスの核心と高まる緊張

 そこで注目されるのは、今後の「ミンスク2」の履行プロセスである。

 ウクライナのポロシェンコ大統領は3月16日、ドンバス(ドネツク及びルガンスク両州の総称)の親露派支配地域に自治権を認める法案(特別地位法案)を最高会議に提出し、翌17日承認された。

 親露派支配地域にこのような地位を与えることは「ミンスク2」で規定されており、和平への第一ステップと位置付けられる。しかし、この法案では親露派武装勢力の支配地域を「一時的に占領された地域」と規定するとともに、同地域への自治権付与はウクライナの憲法と法令に従って実施される住民投票を経てのみ認められると規定されていることから、ロシアや親露派は猛反発している。

 ロシア外務省が3月16日に発出した声明で、ポロシェンコ大統領提出の法案には「ミンスク2に盛り込まれていないことが規定されている」と非難している通り、「ミンスク2」では住民投票は自治権付与の条件とはされていない。また、自らを独立国家だと主張する親露派側としては、その「国土」が「一時的に占領された地域」に過ぎず、そこで「ウクライナの憲法と法令に従って」選挙が実施されることなど容認しがたいというところであろう。

 ただ、ウクライナ政府側から見れば、親露派武装勢力による占拠の事実を認めたまま自治権を与えれば現状が固定化される可能性が高く、今後の憲法改正による「脱中央集権化」がロシアや親露派の目論む「連邦化」そのものとなってしまうことにもなりかねない。

 逆に言えば、こうした展開を狙ったからこそ、「ミンスク2」は前述のような内容となったわけだ。

 それだけに、今後、和平プロセスがその核心に近づくほど、緊張が高まっていくというパラドックスが予想されよう。この際、緊張がある時点に達した段階でロシアがこれまでの軍事介入を公式に認め、介入をさらに大規模化させるのではないかとも見方があるが、これについては機会を改めてご紹介したい。 

  
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