2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年4月16日

 シンガポール南洋理工大学国際研究院のスプリヤント研究員が、ナショナルインタレスト誌ウェブサイトに3月7日付で掲載された論説にて、インドネシア最北端のナトゥナ諸島が中国により脅かされる可能性があるとして、同諸島のインフラ整備を進めることが同諸島防衛の第一歩である、と指摘しています。

 すなわち、南シナ海にあるインドネシアの最北端、ナトゥナ諸島は、今後フラッシュポイントになり得る。ジョコ・ウィドド大統領は南シナ海の広大な領域への主張をしている中国との間で、この問題をどうするのか。

 ナトゥナ諸島はジャカルタから1,000キロ以上離れており、26万2,000平方キロにわたって広がっている。この「距離の専制」がインドネシアの北辺の監視と管理の脆弱性を強め、ナトゥナ諸島は、大きな安全保障問題に直面している。

 インドネシアは、公式には南シナ海の紛争の当事者ではないと主張しているが、ナトゥナ諸島の北東の水域では、インドネシアのEEZが中国の主張する9点線と重なり合っており、中国の主張に挑戦するために何かをしなければならないと感じている。2013年には中国船を拿捕し、中国船がインドネシアの巡視艇を包囲する事件が起こった。

 ナトゥナ諸島は、漁業のインフラ、経済を支える発電設備が全く十分でなく、同諸島近海におけるインドネシアの軍事プレゼンスも弱い。海軍は小さな艦船しか持たず、同諸島のラナイ空軍基地には戦闘機は一切常駐していない。1996年以来、軍事演習は実施されているが、ナトゥナ諸島の限られたインフラ、作戦上の必需品(燃料、メンテナンスや修繕用予備部品)の不足は軍増強を困難にしている。

 外国、特に中国からの投資の誘致は、軍事力の弱さを補い、インドネシアの領域に対する承認と尊重を得るための広範な戦略に役立ち得る。インドネシアが中国の「21世紀海洋シルクロード構想」を受け入れ、ジョコ・ウィドド大統領の海洋ビジョン構築の助けとすれば投資誘致に役立つが、インドネシアは中国の南シナ海における野心に何も懸念を持っていないとの誤ったメッセージを送ることになりかねない。

 中国が占領している土地の近辺で埋め立てが進むにつれ、ナトゥナ諸島は、中国の空海のレーダーの範囲に容易に入り得る。ファイアリー・クロス礁、ジョンソン南礁の滑走路は、中国がナトゥナ諸島の空域の一部に防空識別圏を強制することを可能にする。埋め立てられた土地は、インドネシアのEEZ内で操業する中国の遠海漁業とその武装ガードの基地となり得る。これは、インドネシアの漁船、巡視艇との遭遇の可能性を高める。


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