2024年11月22日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年4月16日

 以上を念頭に、インドネシアは、ナトゥナ諸島開発に直ちに着手しなければならない。地元の需要増大に応えるに十分な発電所の建設から始めるというのでもよい、と論じています。

出典:Ristian Atriandi Supriyanto,‘Red Alert: The South China Sea's New Danger Zone’(National Interest, March 7, 2015)
http://www.nationalinterest.org/feature/red-alert-the-south-china-seas-new-danger-zone-12373

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 ナトゥナ諸島については、昨年4月にインドネシア国軍のモエルドコ司令官が「中国はナトゥナ諸島の一部を9点線に含めている」と批判し、ナトゥナへの早期警戒システムの導入、ラナイ空軍基地の拡大計画を示しています。しかし、論説も指摘する「距離の専制」、必要なインフラの欠如により、計画は順調には進捗していないようです。ナトゥナ諸島防衛に必要なインフラ整備を日本が支援することも検討してはどうかと思います。

 ただ、ナトゥナ諸島防衛のためには、インフラ整備をするというだけでは悠長に過ぎ不十分です。中国の南シナ海での埋め立て行為には、米、日、関心を持つアジアその他の諸国が一致結束し、強力な抗議をするべきです。このままでは、どんどん現状が変更されてしまいます。早急に日米で外交イニシアチブを取るべきであり、特に、米国には、この問題でアジアへの軸足移動の真価が問われているとの意識を持つことが望まれます。

 それに対して中国が反論するのであれば、国際会議の場に出てきてもらって議論すべきです。今のように個々の国が不満を言うだけでは、中国は高をくくって、埋め立てを進める一方でしょう。こういう状況は変えなければなりません。

 抵抗があれば引っ込み抵抗がなければ厚かましく出てくる「機会主義」は共産主義国家の常套手段です。中国の南シナ海、東シナ海での行動もそうです。南シナ海では、中国は越と比には強硬に出る一方、インドネシアには手加減をするなど、相手側の足並みを乱しています。ASEANでも南シナ海に関係のないカンボジアなどを使い、共同戦線結成にならないようにしています。インドネシアは中国との関係を重視するあまりか、中国のこの戦略に乗っているきらいがあります。海洋に関するジョコウィ・ドクトリンは画期的なものですが、21世紀海洋シルクロード構想がその助けになるとの考えは、論説の指摘する通り危ういものです。もし中国の投資をナトゥナに誘致することが中国の行動の穏健化になるなどの議論があるとすれば、脅威の認識が間違っているように思われます。

  
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