2024年12月23日(月)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2015年1月7日

 インドネシアのウィドド大統領が東アジアサミットで発表したインドネシアの海洋国家としての立場を強化する外交政策ドクトリンについて、米外交評議会のカーランツィック上席研究員が、実現には高いハードルがある、と言っています。

 すなわち、インドネシアの歴代大統領は、スハルト後の混沌で大きく失われた同国の地域的・国際的影響力を少しずつ再建してきたが、ウィドド大統領(ジョコウィ)が11月にミャンマーで開催された東アジアサミットで示した外交政策ドクトリンは、最も大胆なものである。ジョコウィ・ドクトリンは、インドネシアをインド洋国家と米中などの太平洋国家の「結節点」と位置付け、インドネシアの海上貿易、海洋インフラ、海洋安全保障に焦点を当て、インドネシアの海洋国家としての力を大幅に増大させる意図を表明した。しかし、インドネシアが、ジョコウィの壮大な計画を実現させるリソース、政治的意思を持っているかは、疑問である。

 ジョコウィ・ドクトリンの実施には大きな障害がある。一つには、インドネシアの軍事費増大は、地域の軍拡競争を激化させかねない。中国は、インドネシアの海軍増強は南シナ海のリアオ諸島への中国の主張を退けるためではないかとの疑念を抱くであろう。地域の他の国々は中国ほどには懸念しないであろうが、マレーシアとシンガポールは、インドネシアの海軍力増強に透明性を求めている。

 第二に、陸軍からリソースを海軍や沿岸警備隊にシフトさせる必要があり得るが、それは、陸軍の将校たちを刺激しよう。今日のインドネシアでは、陸軍将校は、権力と影響力の大規模なネットワークを依然として維持している。

 第三に、インドネシアの海洋インフラを増強する計画は、より多くの外国からの投資を引き込むことが出来るか否かにかかっているが、それは難しい。日本の投資家はインドネシアの海洋インフラ増強に既にコミットしているが、欧米、シンガポール、豪州の投資を誘致する計画は当てにできない、と指摘しています。

出典:Joshua Kurlantzick,‘Jokowi’s Maritime Doctrine and What it Means’(Council on Foreign Relations, November 25, 2014)
http://blogs.cfr.org/asia/2014/11/25/jokowis-maritime-doctrine-and-what-it-means/

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 ウィドド大統領は、東アジアサミットでの演説で「インドネシアは世界海洋国枢軸(World Maritime Axis)の一角をなす」と宣言し、インドネシアはインド洋と太平洋の結節点であるとの地政学的認識を示し、海洋ドクトリンの5つの骨子を挙げています。


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